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Bland New Tea☆Time♪

Bland New Tea☆Time♪

このページは、管理人が書いたPSO小説となります。
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なお小説内に登場する企業・組織・団体は架空のもので、実在する企業・組織・団体とは無関係です。

Phantasy Star Online Destiny 本編10話pso-novel

「魔窟」
 海鷹(カイオウ)記念総合病院…

 「もぉ大変だったわぁ><」
 看護師フォニュエールkaedeが紅茶を飲みながらそう答えた。
 エリス達が帰還して2日が経過していた。
kaedeの休憩時間中にパイオニア2で起こった事を聞きにきたのだった。
 ・ハンターズ養成学校の襲撃
 ・発電所の襲撃(一時的な停電だけとなったが)
 ・研究所(ラボ)などの主要施設の襲撃
 ・それに伴う多くの怪我人がでた事
 「はわぁ〜…」
驚いた顔をして聞き入っていると、総督府から、呼び出しのコール音がなる。
 「およ?かえでちゃんいってくるねぇ〜」
 「はぁーい^^」


総督府第二演習場…

 「皆、よくがんばってくれた。多大なる被害がでたが、無事鎮圧することができ感謝する。」
 総督の労う言葉と共に用意されたスクリーン上に画像が表示される。
エリス達が探索したエリアに洞窟エリアへの侵入経路が見つかったのだ。
 「しかしながら、君達にはもう少し働いてもらわねばならない。
  皆すでに知っていると思うが、パイオニア2内に侵入者が現れた。
  ハンターズ養成学校に襲撃した奴らの中には、その生徒も存在した。」
そのときの画像及び映像が流れる。
 「のぞみぃ、がんばってるねぇ」
エリスがそんな感想を述べながら映像をみていた。
 「!!!」
 最後の映像に表れる一人の黒服の少女。自らと瓜二つの少女の姿に驚愕の表情に固まるエリス。
違うのは装備と服装と髪型ぐらいだろう。
 「A.N.G.E..L..S計画…?」
 エリスのその単語がキーワードとなり、シャトの封印されたいたデータが開放される。


A.U.W3076年…(主エリス6歳)

 この記録データは、主エリスが6歳の時…今から8年前の記録だ。
主の父ロイド=シンフォニア・母レナ=シンフォニアがパイオニア1に乗り込む前日の夜の記録だ。
いかないでと泣き疲れてベッドで寝ている主・妹ミミの前に2人が現れる。
 「よくねてるわね^^」
母が手渡した銀時計を抱えるように眠る主の頭をなでそう告げる母レナ
 「ああ、でもきっとこの子達は俺らを追いかけてくるだろうな。」
父ロイドが子供達の顔を優しく見つめる。
 「この子達を守るためにこれをつくったんじゃないの^^」
銀時計を手にとり、父ロイドをみつめる母レナ
 「君のつくった銀時計<戦乙女の加護>(ヴァルキリエ・リーベ)が…」
そう告げ、私シャトを腕にかかえ頭をなでる父ロイド。
 「そしてお前が、守ってやるんだ。」
じっと私を見つめる父の表情をみてうなずく私であった。
 「A.N.G.E..L..S計画…」
母レナが、そう告げた瞬間記録がそこで中断されプロテクトが掛けられた。


総督府第二演習場…

 「以上、ブリーフィングを各自確認の上解散。集合日時は追って報告する。」
シャトが記録をたどっている間に、作戦行動の会議は終了したらしい。
 「エリ〜、いよいよお父さんお母さんの方に近づいてきたね☆」
エリスの友人であり相棒であるマリアがそう笑顔でいった。
 「うん!」
気合をいれ握り拳をつくるエリスであったが、不安を隠せずにいた。
自分とよく似たもう一人の人物…声までもそっくりであるが、内に秘めたる実力は自らを遥かに凌駕している。
直感が告げていた。この少女と出会うだろうということ…。
それは父母と関係があり、戦いは免れないことを…
シャトの封印されているデータと何か関係するような気がするのだった。


次の日…シンフォニア家自宅…

 今まで行方不明だったメルセデス探偵事務所からメールが届いた。
 「今までご心配をおかけしました。東経67北緯195の森エリア地点に来てください。」
  東経67北緯195…この場所は、つい先週主エリス達一行が調べに行ったエリアであり
父ロイドが残したメッセージパックの内容と一致しているの。
さらに総督府が調べ上げた結果、内部に洞窟と思わしき空洞があることが判明したことは記憶にあたらしい。
家族全員の一致で、そのエリアに向かうことにした。


森エリア2…

 「きゃああああああああ!」
突然の悲鳴。ハニュエールの女性が襲われていた。
 「おぉ?ヒルデブルー!?」
ミミが驚いたのも無理はない。森エリアでは希少種の青いゴリラである。
咆哮と共に拳を振り上げ、女性にむかってその拳を振り下ろさんとしていた所であったのだ。。
 「ラフォイエ!」
 祖母iイヨの巨大な爆発がヒルデブルーを直撃し、周辺を木々を揺らす爆発音で周りの葉が落ちていく。
数m先まで吹き飛ばれながらもよろめきながら立ち上がり咆哮をあげるヒルデブルー。
その瞬間、森がざわめきヒルデベアの群れが姿を現す。
 「蹴散らすぞ!」
 兄K'sが叫び、エリスが剣を手に取り構える。
左右から襲い来るヒルデベアをK'sは父ロイドの愛刀であるアギトでヒルデベアを両断してのける。
返す刀で、迫って来る別の2体も瞬時に切り伏せた。
 「ほっほほ。がんばるの〜。」
 のんびり構えるヒポポットの背後からヒルデベアが襲い掛かる。
その拳を左手で受け流し、右手から放たれたラフォイエがヒルデベアを吹き飛ばす。
 「さて、一気にかたづけるかの〜」
 ヒポポットがデュランダルを手に取り構える。
いつもの、好々爺とした顔つきから、精悍とした戦士の顔つきへと変わり体に気が満たされていくのが分かる。
ミチッ…ミチッ…そう音が聞こえるほど気が満たさた体は、老人とは思えぬほどの筋肉の張りを見せる。
 「うぉ!?マッチョ!?」
イヨ以外の全員が純粋に驚いていた。
 「シンフォニア流…体術奥義が壱…練硬武神(レンコウブシン)
 ヒポポットの体は、鋼鉄を思わせるほどの張り詰めた筋肉によって全身が覆われていた。
それだけではなく、全体的に若返ったように精悍な表情を見せていたのである。
 「お前達、新しい次元の戦いを教えてやろう。よくみておくんじゃぞ〜」
そう言った瞬間、空気が爆ぜるように強烈な突風がヒポポットから巻き起こる。
 「シンフォニア流剣術中段、桜舞(オウブ)!!」
 それは、荒れ狂う嵐のごとくヒルデベアを切り裂き、竜巻のごとく吸い寄せ粉々に打ち砕いていく。
上空に舞った血と肉片がまるで舞い散る桜のごとくふりそそぐのであった。
 「ぐはぁ!?こ・・・腰が・・!?」
技を放った直後、ぎっくり腰になるヒポポット
 「じいちゃん!大丈夫!?」
エリス達が駆け寄るが、すでにもうリタイアの様子が目に見えていた。
 「すまんが、お前たちで進んでいてくれんかの〜。」
テレパイプを出し病院に搬送されるのも見届けてから、先ほどのハニュエールが声をかけた
 「あの・・・有難うございます、助けていただいてありがとうございました」
頭を下げながら心から感謝しているのが目にとれた。
 「しかし・・・無茶して先にすすんだら命がいくつあってもたりんよ」
イヨが心配そうにそう告げた。
 「すみません・・・でも、どうしても先に進まないといけないんです!」
必死な表情で訴えるハニュエールに主達一同が驚く。
 「一体どうしたんだ?」
K'sが心配になって問いかけた。
 「実は・・・姉がラグオルで行方不明になってしまって・・・森エリアもある地点で発信信号が途絶えて・・・」
涙をぬぐいながら答えていくハニュエールに一同は真剣な表情で見つめる。
 「それが丁度、総督府が調べた洞窟エリアがある地帯なんです・・・・」
ハニュエールの肩をたたき、慰めながらK'sが答える。
 「俺たちでいいなら、手伝うぜ!俺達も探している人がいるんだ・・・」


東経67北緯195の森エリア2…

 そこには、禍々しく口を開いた魔獣の咥内を思わせるように洞窟の入口が開いていた。
エリス達は進入を開始する・・・その先に何が待ち構えているのか?
魔獣の咆哮のごとく風が内部から流れ不安を一層膨らますのみであった・・・。


洞窟エリア1入口…

 地上とはうって変わってむせ返るような暑さ…
岩盤の割れ目からは真っ赤な溶岩が流れているのが目にとれた。
 「んだ・・・こりゃ・・・」
額に流れ出る汗をぬぐいK'sがぼやきながら足元を注意深く見る。
カタカタと地面が揺れるのを感知できる事から、噴火が近いのだろうか・・・?
 「こちら、エリス=シンフォニア・・・総督府きこえますか・・・?」
エリスがBEEシステムによる通信を行い始める。
 「こち・・・総督・・・・きこ・・・・ザーザー」
電波が通じないばかりか現在位置を示すナビシステムが作動しない。
 「まじでぇ!?」
ミミが驚きの声をあげていた。
 「しかたない・・・何にしても先に進むしかないね・・・」
イヨ'がそういい先に進んでいく。


10分後…洞窟エリア1扉前…

 天然の洞窟かと思われたが、目の前には大型倉庫のロック式の扉が現れた。
 「え…?天然の洞窟じゃなかったの?」
 「人工物があるってことは、そうだろな。」
 「ん・・・ロックされてるね」
 コンコンと扉をたたき、暗証番号入力のハッチを開く。カタカタと動かし始めるが・・・
 「現在、ロックLV3・・・内部ニ原生生物ノ存在及ビ隔離、
  内部カラノロック法規的理由ニヨリ通行許可ハ降リマセン」
無機質なコンピュータの音声が流れてくる。
 「あいにく、こっちは用事があるんでね、通らせてもらうよ!」
鞄からハッキングツールを呼び出したイヨの手により、ほどなくして扉は開かれた。


洞窟エリア1…

 「いっちばーん乗り〜♪・・・ひにゃ!?」
 洞窟にピョコンと真っ先に足を踏み入れたミミが凍り漬けになった。
フォトンステルス機能により完全に周囲と同化してるトラップが発動したのだ。
 「誰だ!!」
視線を先にやると一人のレンジャーがこちらに気づきマシンガンを構えた。
 「侵入者か・・・」
 そう告げると同時にマシンガンを乱射する。
エリスが氷結しているミミを守るように前に立ちはだかる。
 「シンフォニア流剣術初段、疾風(ハヤテ)!!」
 超高速で振り出される斬撃が全ての弾丸をはじくいていく。
その横を風のように走りぬけ、K'sがレンジャーに一撃を加えようとした瞬間!!
すさまじい衝撃を受け、数m吹き飛ばされるK's
 「ファントムペイン(幻影なる苦痛)・・・」
 ブーメランのように弧を描き、放ったであろう本人の手にソレは舞い戻った。
 「ククク・・・ハハハ・・そいつを倒されるのは困るんでな・・・」
ソレは、蒼く輝く月のごとく鋭利さと狂気を秘めた鎌ソウルイーターであった。
返り血がさび付いてしまったかのような紫のボディーに冷徹さと狂気を秘めた口調
 「お前は・・・・キリーク!!!」
ラストサバイバーを構えながらエリスが叫んだ。
 「フフフ・・・ハハハ・・・やはり来たか・・・ククク・・・」
ソウルイーターを構えたままキリークが近づいてくる。
 「やはりって・・・?」
エリスは、身構え油断なく氷漬けになったミミと倒れているK'sを守るように前へと動いていく。
 「後で判ることだ・・・ラウンドブレイク(崩壊する大地)!!」
 キリークの腕が残像を残して動いたその瞬間、主エリスの立っていた地面は砕ける。
体勢を崩したエリスのわき腹をソウルイーターの柄が襲い掛かるのをイヨのフォイエが防ぐ。
走りながら広範囲レスタを唱え、全員の傷を癒すイヨ。
 「くはは…白き魔女と恐れられていたイヨか。貴様は食い応えがありそうだな…。」
 「キリーク!」
 氷の刃と化した強力な猛吹雪ギ・バータを放ちながら孫達を守るように位置を変えていくイヨ。
それを、氷の刃を事如く打ち砕きながらキリークが打ち落としながらキリークが迫る。
 「守りながら戦うのは大変だろう?」
 「孫達をあんまり、なめないほうがいいわよ?」
 イヨの言葉通り、エリスとミミが右から、K'sが左からキリークを挟撃する。
だが、キリークは鼻で笑いソウルイーターを大地に突き立て闇の力を解放したのである。
 「ボルケーノ・イクスプロージョン(火山爆発)!」
 「がはっ・・・!」
キリークの闇の力に呼応するように、大地が鳴動し巨大な爆発を引き起こし、エリス達全員を吹き飛ばした。
 「へへ・・キリークの旦那助かりやしたぜ!」
キリークの横にいたレンジャーが、そう答え銃を構える。
 「フン・・・手筈通りやっておけ・・・」
レンジャーから打ち出される弾丸がイヨ以外の全員に当たると同時に強制的にどこかに送り飛ばされた・・・
 「さあ…これで心起きなく戦えるだろう…ククク」
 「孫達は返してもらうよ!」
イヨの瞳が怒りに満ち殺気を周囲に発散させるのを、キリークは楽しそうな笑みを浮かべながら襲い掛かる!


洞窟エリア1中心部…

 ズズズ・・・ゴゴゴ・・・ザッザッザッ・・
まるで軍隊の足音のような地面の振動を感じて目を覚ましたエリス。
 「っ痛・・・んん〜ここは・・・?真っ暗だし・・・どこだろ・・」
 キリークの爆発の影響で、全身が傷だらけであった。
シャトがエリスとおでこを合わせて意思伝達を行う。
 「ほむぅ・・・洞窟入口からだいぶ離れてるんだ・・・それに皆とも・・・」
電波が通じず位置把握ができない現在の状況下においてシャトの能力は役立つ。
 D因子間疎通能力・・・
D因子を兼ね備えたD細胞間における疎通能力である。
双子がお互い何を考えてるのかわかるように、マグが手に入れた能力
 もっとも相手の場所までわかるのは大本であるこのシャトだからできる事なのだが・・・
ただ、この能力は曖昧なものでなんとなく向こうにいて遠近感が判る程度でしかない。
バシュ!という洞窟入口にあったロック式のドアが開く音が聞こえると同時に、向こう側から光があふれ出る。
逆光の中に見えるシルエットには見覚えがあった。
 「待たせたな・・・本気で遊んでやる・・・ククク・・・」
 「キリーク・・・・!!」
 「いや我が名は、ケルベロス……
  キリークのクローン3体いる内の1人といった所だ」
 たしかに逆光の中で喋るそのキリークは、違って見えた。
キリークのボディカラーは紫であるのに対して、黒色であったからだ
闇の中に消えるように動きながら、殺気だけが手に取るように解るケルベロスの動きに本能が警鐘を鳴らす。
直感的に背後に動くと同時に、風切り音と共に元いた地面が砕け散ったのである。
 「ほう…ラウンド・ブレイクを避けるとは?」
 「殺気でわかるっての!」
 エリスの叫びに合わせるように、銀時計が光輝き始め。ケルベロスに向かって疾走を始める!
 「シンフォニア流剣術初段、疾風(ハヤテ)!」
 高速で放たれるラストサバイバーが繰り出無数の斬撃を、キリークは難なく刃で受け止めてみせた。
火花散る連攻撃の中、浮かび上がるキリークのカラーリングが紫ではなく黒であるのに気づくエリス
その僅かな驚きの隙を逃さずキリークの閃光の一撃がエリスを捉えたかに見えたが…
 ディープ・インパクト(突き刺さる衝撃)!」
銀時計が力強く光輝き目くらましとなり、避けきると同時にエリス最大の必殺技を解き放つ。
 「カノソ流剣術+シンフォニア流剣術 連携技!
  疾風砕刃(シップウサイジン)!」

 疾風(ハヤテ)の速さと砕(サイ)の威力を持つこの技に、たまらず吹き飛ばされるキリークであったが、
空中で体勢を変えながら、闇の力を纏わせたソウルイーターを投げつけた!
 「ファントムペイン(幻影なる苦痛)!!」
ブーメランのごとく高速で飛んでくるのを、技を放った直後のエリスに避けれるはずもなく受け止めにかかる。
ガキン!!金属通しがぶつかりあう甲高い音と共にラストサバイバーにヒビが入りながらも吹き飛ばれた。
戻ってくるソウルイーターを受け止め着地するキリーク
 「少しは成長したようだが・・・まだまだだな・・・まだ足りん・・」
 「こ…の…!」
 「ディープインパクト!」
 ひび割れたラストサバイバーで果敢に立ち向かおうとするエリスを、一閃の元切り伏せた。
切断されたラストサバイバーがドスっと音と共に、エリスは出血多量で思わず膝が落ちていく。。
斜めに切られた所からとめどなく血が流れ落ち、エリスは崩れるように前へ倒れこんでいった。
 もう動けないと見てとったのか通信機器を取り出す・・・
今この洞窟エリアでは、通信はつかえないはずだが・・・?
 「く…そ…ここで死ぬの…?」
 「フッ…心臓近くまで傷は達しているからな…救命装置は壊していないから完全には死なんさ。
  まだ利用価値のある内はな…ククク…」
 「どう…いう…こと…」
問いかけに無視し、通信機器が繋がるのをシャトは見逃さなかった。
 (精神波感応通信装置
  それは、マグのD因子間疎通能力を応用発展化させた機械。
  どんな悪条件化でも同一の精神波感応通信装置さえあれば通信可能だという・・・。
  まだどこでも開発されてないはず・・・主エリスの父母をのぞいては・・・・)
 シャトの驚愕は、さらに続く。
 「こちらケルベロス。エリス・シンフォニアを行動不能にした。」
通信装置の向こうから狂気をはらんだ声が聞こえる。
 「フフェ…そうだな…ロジャー、メルセデスのいる牢屋は…他の囚人達もいて満員だったか。
  ふむ…母親のレナのいた牢屋にでもいれておけ…
  娘の死に掛けの姿を見て、助けを求めない親はおるまい。
  A.N.G.E.L.S計画の詳細を吐く気にもなるかもしれんしの…フヘヘヘ…楽しみじゃな。」
 通信が途切れると同時に、突如起こり始めた異変に黒いキリークいやケルベロスは見逃さなかった。
エリスの瞳に生気がみなぎり始め、
 「えへへ…そうか、母さん達生きているんだ…そうか…そうなのか…!」
 倒れているエリスの胸下で。銀時計が今までで最高の輝きを放ち始めていた。
ギイイイイイイイイン!!
という音と共に銀時計は、なお一層輝きを増しエリスの体を浮かせ傷を治していく。
それを見逃すケルベロスではなく、銀時計をはじき上げエリスの心臓を貫く。
 「首の生命維持装置さえ大丈夫なら、原型さえ保ってれば蘇生は可能だからな…悪く思うな。」
 その言葉通り、エリスの瞳から生気が失われ完全に死したかに見えたがまだ終わってはいなかったのだ。
先ほどはじかれた衝撃で銀時計、空中に舞い上がると、同時に壊れた箇所から黒い何かが飛び出していた。
周辺が暗いこともありケルベロスは、それが何であるか知るすべもなし。
落ちたそれは、大地の上を急速に動きエリスの体にまとわり始め、心臓に達すると恐るべき変化をもたらす。
エリスの左腕がソウルイーターを掴みとり体を引き抜き、右腕でケルベロスを殴りつけたのである。
 その一撃は凄まじく、激しく吹き飛ばされたケルベロスは大地を2度程バウンドしてようやく止まった。
 「な…んだ…と…?」
 「グガアア・・・ウオオオアアアアアアアアアア!!」
 ケルベロスは、エリスの体に起きている驚愕の変貌に驚きを隠せずにいた。
傷ついた箇所にくっつきどす黒く変色しながら修復していっているのだ。
そう、回復ではなく修復・・・破損した細胞を修復し万全な状態へと変貌させていく。
 その変貌と、銀時計から出てきた正体をシャトだけが気づいていた。
マグの肉体を構成しているD細胞である。しかも、それはエリスを助けるという意思を持っていたのだった。
 「ククク…面白い…」
 ケルベロスは立ち上がり、そのエリスの変貌に驚きよりも興味が勝ってきていた。
より強者と戦えるかもしれないという、戦いへの欲求がエリスへの攻撃を停止させたのである。
切り裂かれていた箇所は、完全に修復が終わり黒く変色しまるで刺青を施したかのごとく紋様となって
全身に現れ、眼は真っ赤な血のような色に変色していた。
それはまるで手負いの獣が、殺気をみなぎらせながら襲い掛からんとしている姿に似ている。
 「ふはぁー!ま・・まさかA.N.G.E..L..S計画が発動したのか・・・フヒヒヒ!?」
 突如、精神波感応通信装置の向こうから声が聞こえる。
輝き続ける銀時計は空中に浮かび上がりエリスに向かっていき、無事に首にかかるのであった。
それと同時に、エリスの瞳に正気が僅かに戻り始める。
 「…母さんは…父さんは…どこ…?ウグググアアア!!」
 突然の体の変化についていけないのか苦しむエリス
 「フ・・・知りたければ言葉でなど無粋!力で押し通せ!!」
 ケルベロスは、ソウルイーターを構え不敵に笑う。
エリスの瞳からは、正気が再び消え真紅に燃える炎だけが宿る。
前へ突き出した両腕から再び血が噴出し始めるが、その血は赤ではなく漆黒。
血は意思を持つかのように折れたラストサバイバーを包み込み、銀時計の輝きと共に変化を示した。
あらゆる暴力にも屈せず猛る魔龍をも屠る「ドラゴンスレイヤー」へと変わったのである。
 「どう変わったのか見せてみろ!ディープインパクト(突き刺さる衝撃)!!」
 ケルベロスの閃光の一撃に合わせるように、ドラゴンスレイヤーを振り下ろすエリス。
吹き出るオーラが紅蓮の炎となってほとばしり、ぶつかり合う衝撃が熱風となり辺りを包み込んだ。
大地を砕き、受け止めているソウルイーターが溶け始める程であった。
 「フハハ!いいぞ!本気をみせてみろ!!」
 体格差からくる力を利用しエリスを押し戻し、ケルベロスは全身から闘気を噴出し構えた。
負けじと、闘気を紅蓮の炎に変え巨大な炎龍のごとき幻影を生み出す。
両者の圧倒的な闘気に呼応するかの如く、洞窟を鳴動させたのだった。
緊張感に満ちる空気を切り裂き、先に動き出したのは…
 「カウントレス・ペネトネイト(無数貫通)!!」
 「ハアアアアアアアアアアアアアア!!」
 光速の連撃に、炎龍の闘気を纏ったままエリスは正面から立ち向かう。
光と炎との激突!空間全てを揺らす衝撃と共、に決着は一瞬にしてついた。
 「クハハハ…面白い。よくぞ、ここまで成長した…ククク…
  褒美に教えてやる…真実は、闇の底で蠢いている。
  更なる戦いを、再び楽しもうぞ!クハハハハハ!!」
 紅蓮の炎に包まれながらケルベロスは、そう言い残し爆発し粉々に消し飛んだのであった。
 ゴゴゴゴ・・・・爆発がきっかけで洞窟内部の火山活動が活発になっていく。
 「なんてやつ…証拠も一切のこさないために爆発するなんて…
  キリークとは違ったみたいだけど…」
 黒い破片を手に取り、そう呟くエリスの頭上にパラパラと天井から石が落ち始めてきていた。
先ほどの衝撃と爆発により内部振動が高まり、崩れ落ちてきているのだろう。
危険を感じ、テレパイプを起動し動き出そうとした瞬間エリスは気を失う様に倒れこむ。
 D細胞による急激な肉体変化による後遺症であろうとか、シャトは思いながらエリスのハンタースーツの裾を
口に咥えながら、必死にテレパイプに向かって移動していた。
 それと同時にさらなる変化がエリスに起こっていた事に、シャトは思わず目を見開く。
体の黒ずんだ部分は消え去り紋様も瞳の色も元にもどっているではないか。
テレパイプによる移動は、何故かパイオニア2に直結するのではなく洞窟入口に変えられていた。
その事実に疑問を感じながらも、入り口前に辿り着き安全を確保したシャトは一息つく暇もなく
家族一同を探すべくD因子間疎通能力による所持しているマグ同士の共鳴を利用し探りを入れたのだが…
このエリアでは見つからない・・・反応は、洞窟のさらに下・・・・?
そして反応が消えると同時に、入ってきた入口は振動で崩れ落ちてしまったのであった。
 真実はいまだ底しれず・・・闇の底部で蠢いている・・・・
シャトは、ケルベロスの言っていた一言に言い知れぬ不安を感じるのであった。
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