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Bland New Tea☆Time♪

Bland New Tea☆Time♪

このページは、管理人が書いたPSU小説となります。
(HP小説の無断転載を禁じます。)
PSU(Phantasy Star Universeの略称)は、SEGAの登録商標です。
作品の著作権は、作者にあります。
なお小説の内容は、ゲームの攻略等を示す物ではありません。
小説はオリジナル要素を、多分に含みます。ご了承の上お読みください。
ご理解頂けない場合は、ブラウザバックでお戻りください。
なお小説内に登場する企業・組織・団体は架空のもので、実在する企業・組織・団体とは無関係です。

Phantasy Star Universe Concert 本編09話pso-novel

「Visitors of Ark(箱舟の来訪者)」
  SEED襲来から、一ヶ月が経過しガーディアンズと同盟軍の働きによって、
SEEDによる世界的危機から立ち直ろうとしていた。
 フォトンイレイザーという一応の解決策を得た事により、人々の心にも安心が生まれてきたのだ。
人々の中にも復興への意欲が生まれ、再び活気が戻ってきた。
 しかし今だ世界全体の抱える危機を感じている者達は、迫る脅威に備え準備をしていたのだった。


イェルハルト家・訓練室…

 「よーし!ばっちこーい!」
 目隠しをしたままの金髪の少女エリス・シンフォニアが、気合をいれて叫ぶ。
エリスが戦闘態勢をとると、周囲のフォトンが気流となって体の周囲を回り始めた。
 「じゃあヤルぞー?」
リフルが砲台に重さ5kgの砲丸を詰め込み合図をした。
 「エリ〜大丈夫?」
 エリスの友人であるマリア・ショートがハラハラとしながら見守る。
エリスが頷くと同時に、360度囲まれた12個砲台からランダムに砲丸が反射された。
目隠ししたままのエリスにぶつかるかと思われていたが、その砲丸の全てをほんの紙一重で避け
無傷のまま立っていた。
 「ほっほ。だいぶフォトン操作による動体感知がうまくなってきたな。」
 「そうだね☆」
 リフルとマリアが、うんうんと頷きながら関心する。
しかしエリスの表情は浮かないままだった。
 (フィーちゃんの家のフォトン操作に関する秘蔵本は役にたってるけど…。
  まだだ…。ようやくレミ=デュナミスと同じ舞台に立っただけだ…。
  はやく『あの奥義』を完成させないと、勝てそうにないな…。)
そうこうしてると、訓練室の扉が開き2人の女性が入ってきた。
目隠ししたままのエリスが、声をかける。
 「あれ?エリちゃんとマキナさん。どうしたの?」
入ってきた2人はビックリしてエリスを見つめるのだった。
 「おぉぅ!目隠ししたまま分かるのー!?」
 一番最初にビックリしたのは背のいくぶん小さいキャストの少女の名は、エリス嬢。
真っ赤なキャスト装甲を着たかよわそうな外見の少女であるが、
ニューデイズでその名を知らない者はいないと言う名門イェルハルト家の私設部隊の一隊長を務める。
その実力は、同盟軍の二個小隊(約60〜100人)を相手に互角に戦える程である。
 「にゃ〜♪朝食のサンドイッチと紅茶と、ご要望の新聞をお持ちしたにゃ〜♪」
 こちらのより小さな黒髪の少女の名は、神条摩樹奈かみじょう まきな
メイディ服と着た小柄な少女である。
 イェルハルト家の令嬢であるフィーを慕い、同盟軍を辞めガーディアンズを副業としてフィーの
世話役として、イェルハルト家で働いているのであった。
 「うん、フォトンの流れを読む事で、相手の行動や人物を読み取れるんだよ。」
 エリスが、説明し始めた所でマキナが歩いて近づいた所でこけた。
 「うにゃ〜!?」
 エリスの足が、フォトンのエネルギーが噴射し一挙動を加速させコケかけたマキナを受け止める。
さらに、同じ原理でエリスの腕が人間の反応速度を上回る速度で動き空中のサンドイッチと紅茶を
落とす事なく、無事に受け止めたのだった。
 「おっとと。あぶない…あぶない。だいじょぶマキナさん?」
 ニコリと微笑み、マキナの顔を見る。
 「にゃ〜♪だいじょぶでしたにゃ♪ありがとうにゃ♪」
 ピョコンとお辞儀し、マキナも笑顔で答えた。
全員で話をしながらの朝食を開始する。
 「うまい!」
 「おいしい☆」
 「んだな。」
 エリスとリフル、マリアがサンドイッチのあまりのおいしさに絶賛した。
それを見ながら、マキナとエリス嬢は照れ笑いを浮かべていた。
 「えへへ♪ほめてくれると…うれしいなぁ♪」
 「にゃ〜♪頑張ったかいが、ありましたにゃん♪」
 フフッと皆の表情が笑顔になるのであった。
 「そういえば、フィーちゃんとゆっちゃんとソロルちゃんが、もうすぐ5日休暇もらえる事になって
  実家もどってくるんだっけ?」
 ここ一ヶ月の間に、エリス達はフィーの紹介で、ユファと被験体1096ソロルにも出会い仲良く
なっていたのだった。
エリスの問いに顔を真っ赤にしながらコクコクと激しく頷く、マキナ。
その目は、キラキラと光り輝き嬉しそうだ。
 「フィー様が帰ってきたら、たっぷり愛情を込めて料理をつくってあげるのにゃ♪
  はやく会いたいにゃ〜♪」
体をモジモジとさせながら、ワクワクしてるのがものすごく解る。
 「そうそう、ガーディアンズ装備開発課所属にいる フィーちゃんと同期の子が
  新装備を開発したおかげでね。ひさびさの有給休暇の残りを消費できるらしいのよねー。
  たしか、今日の朝刊に載ってるはずよー?」
そういう、エリス嬢の言葉の通り新聞の1面見出しにデカデカとその内容が載っていたのだ。
 『ガーディアンズ装備開発課所属の天才少女サクラ。SEED対策に画期的装置を開発!
  氷侵食したSEEDにも、効果を現す新型のフォトンイレイザーを開発。
  未確認情報ながら、ガーディアンズの基本性能を引き上げる新型の部品を現在開発中との
  噂もあり全種族の戦力強化が期待されている。』
 へぇ〜、と感心しながら、エリスは新聞を見ていた。
全員が朝食を取り終わり、エリスは立ち上がり動く準備を開始しだした。
 「さてと皆、奥義を完成させるために手伝ってもらうよ!」
 エリスがニヤリと笑い、全員を見つめる。
 「エリス…、まずは口についたマヨネーズをふき取れ。」
リフルが、もぐもぐ頬張りながら呟く。
 「ぬぐぐ…。リフルだって、食べながら喋ったら行儀悪いんだよ1」
ヘイヘイと、一口で食べ終わりにリフルも修行を手伝う準備に入った。
 「皆準備はいい?」
エリスの全身から、フォトンのエネルギーが暴風の如き吹き荒れたかと思うと凝縮し始める。
 「いくよ…」



ガーディアンズ本部・粛清課・司令室…

 エリス達が、修行を再開しはじめた頃、ガーディアンズ本部の一角で騒がしくなっていた。
ざわざわっと粛清課の中で激しい議論が1時間以上繰り返されていたのである。
 「マスター・ゲオルギウス? それは…まだ早いと思いますが!?」
 普段は、冷静沈着なアルベルト・マルガノフが声のトーンを上げて抗議する。
 「そうね。私もアルの意見に賛成よ!」
 アルベルトの意見に同調するというより、より一層反対の声を強めていうフィー・イェルハルト。
儚い可憐な少女の見た目とは違い、粛清課の中でも、No.1と目される折り紙つきの実力を持つ。
フィーが今回の案件について、一番強く反対するのには理由があるのだ。
 「ソロルちゃんを一人で買い物にいかせるなんて!危険すぎるのよ!!」
 バン!と強く机を叩き、積まれていた資料がバサバサッと落ちた。
やれやれっと言った表情で、マスター・ゲオルギウスと言われた初老のヒューマンの男性が
フィーとアルベルトを見つめる。
 「君達が、ソロル君を大事にしているのは判るがね。」
 「あったりまえでしょ。」
 「そうですよ。」
うむ。と頷き返すゲオルギウス。
 「だからといって、雛鳥がいつまでもピィピィ鳴いてるわけではない。
  最近のソロル君を見てみたまえ。
  彼女は、彼女なりに色々な事を覚え頑張っているではないか?
  そろそろソロル君には、社会勉強を教えてもいいと思うのだがね。」
 ゲオルギウスの言い分はもっともだが、不安が隠しきれない2人の表情を見てとる。
かすかな微笑を浮かべ、ゲオルギウスはさらなる提案をするのであった。
 「ソロル君に気づかれないように気をつけながら、フィー、アルベルト君達が見守りたまえ。」
 「おぉ!さすがマスター・ゲオルギウス。」
 「ちょ…待ちなさいよ!
  それは良いとして、ソロルちゃんは『エンドラム機関』と『イルミナス』も狙っているのよ?
  市街地だからといっても、数に任せてソロルちゃんを攫う可能性だって…」
 反論するフィーに、ゲオルギウスの目が光った。
今回の作戦に絶対の自信をもっている歴戦の猛者の表情であった。
 「無論、その事も考えてある。では、今回の任務を説明しよう。」


 ゲオルギウスが、卓上のキーボードを操作し空中に巨大な空中モニターを表示させる。
ブォン…と、低音の起動音と共にモニターに表示されるのはガーディアンズコロニー。
さらに画面が切り替わり、ズームされていきガーディアンズにとってお馴染みであるクライズシティ
の2階が表示されるのであった。
 「君達はAフォトンの研究者達が行方不明になる事件を覚えてるかね?」
 「何言ってるのよ。ガーディアンズの研究者も行方不明になってるから、私達も合同調査して
  いるんのじゃないの…。それが、ソロルちゃんの一人でお買い物と関係あるって言うの?」
 うむ、と答えモニターの画面が切り替わる。
画面は、2Fから3Fへいくためのエスカレーターの後ろ側であった。
 「最新の報告では、今から3日前に科学者がこの場所で行方不明になった。
  目撃者の証言によると、ソロル君によく似ている少年が科学者に手を触れた瞬間に消えたらしい。
  …まるで、ナノトランサーに収納されるかの様にな…。」
  「ソロルちゃんによく似た少年ねぇ…。」
 ゲオルギウスの説明を受けフィーの頭によぎったのは、ソロルの特殊能力の一つ。
神の抱擁』…Aフォトンを用いる事で、空間を捻じ曲げる事でより多くの物体を収納できる技術。
通常ガーディアンズの使用するナノトランサーの最大許容量は縦4m横4mまでの物体までだ。
しかし、ソロルの最大許容量は100倍を誇る縦400m横400mまでである。
 「複数の行方不明事件でも同様の手口が見られる事から、総督府の出した回答はこうだ。
   第一に、まりもらの証言から得られたソロル君の兄である被検体1076フラーテルの存在。
  彼が、『エンドラム機関』または『イルミナス』に関与し働いている可能性。
   第二に、奴らが新型のナノトランサーを用いて無傷で誘拐している可能性。
  一人になってから誘拐される事が多いから、ガーディアンズ職員の誰かが情報を流している
  可能性も否定できない。
   第三に、ソロル君がイルミナスに情報を流している可能性。
  こちらの案に関しては、即座に却下されたがね。
  ソロル君が記憶を失っている事。機密情報を扱う事柄に従事させていない事。
  24時間体制で、フィー、ユファ君がソロル君を監視、保護しているしな。」
ええそうよ、と自信をもって答えるフィーに、同じく頷き返すゲオルギウスであった。
 「前おきが長くなってしまったが、改めて今回の作戦の説明をしよう。
   まず君達は、ソロル君の一人でお買い物の監視。
  総督府に対するソロル君の疑惑を晴らす目的でもある。
  それと同時に、余裕があれば行方不明事件の情報聞き込み。
   第二に、買い物させる時間に合わせて、パルムのレリクスで発見されたスタティリアの搬送が
  ガーディアンズ本部に向かって行われる。
  搬送終了までの間、1機動警備隊のガーディアンズ150名でコロニーを厳重警備して
  今回の任務の最高責任者のサクラ君とスタティリアを守る予定である。
  その際に、サクラ君が襲撃された際に護衛及び撃破。
  フラーテルが関与している場合、ソロル君が説得できるモノなら説得を試みてかまわん。」
 「んー、そんだけの警備ならさすがにサクラを狙う可能性も低いんじゃないの?」
 「はい、僕もそう思います。」
頷き、ゲオルギウスがモニターを閉じた。
 「サクラ君が、研究室に入ると研究室から出てこないのは有名だからな。
  現在もっとも有名な科学者であるサクラ君を狙うには、外に出ている今が絶好のチャンスだ。
  君達は保険のつもりだが、気をつけてくれたまえ。」
 「了解!」


ガーディアンズコロニー・クライズシティ4F…

 「ふに。えーっと、ディメイト20個とソルアトマイザー10個でいいんですね?」
 フィーから手渡されたメモを、ほむほむと言いながら読み返していた。
ソロルの頭を、優しくなでながらフィーは優しく告げる。
 「いい?ソロルちゃん。初めてのお買い物だけど、寄り道せずに帰ってくるのよ?」
 コクコクと頷くソロルに、フィーの心配する心は隠しきれてないでいた。
 「いってらっしゃい!」
 「いってきまーす。」
 フィーとアルベルトが、クライズシティ4Fで手を振って送りだす。
ソロルも手を振って答えるが、前を見ていないせいで通行人にぶち当たりこけていた。
 「…心配だわ。」
 「…僕もです。」


 今回の任務にあたり、予想されうるソロルの行動を十二分に議論しコンピュータ処理も施して
得られた回答は、1万5230通り。
 「今回の作戦に、不備の可能性があるといって50名の増員もしたしソロルちゃんが予想外な
  行動とるようなら、配備しているガーディアンズに声かけて元のルートに戻す様に言ってあるし
  それ以上の問題が起きない限り大丈夫よ。」
 「そうですが、それでも不安は隠せませんね。」
 アルベルトの不安そうな表情を見てとって、フィーが励ます。
 「もし失敗したら、うちらがソロルちゃんを連れ戻せばいいだけじゃない。大丈夫よ。」
  フィーが、アルベルトの背中を叩きながら笑顔でそう答えたのであった。
アルベルトは頷き、ソロルから気づかれずつかず離れずの絶妙な距離をとり尾行を開始した。


ガーディアンズコロニー・クライズシティ4F…

 ソロルが、露店の匂いにつられて、道をはずれそうになったりコケたり、迷子になりかけながらも
増員したガーディアンズ職員の手を借りつつも、ひとまずの買い物が出来たのであった。
 「本来5分もかからない買い物に、30分ぐらいかかるとはさすがソロルちゃんね…。」
 「フィー、見てください。ソロルさんが、お金落としましたよ。」
 アルベルトが指さし、ソロルを見つめるフィー。
落としたお金を拾おうとして、あけっぱなしだった財布からさらにお金がジャラジャラと落ちて収拾が
つかない事態になっていた。
 「あのじじい…。やっぱり、まだソロルちゃんにお買い物させるの早かったんじゃ…。」
 フィーが、呟きかけた時周囲の空気が変わってきた。
クライズシティの1階から5階までの警備担当をしていたガーディアンズ達が、慌しく動き始めたのだ。
全員が緊張した面持ちで、警備体制に緊迫した空気が流れ始めたのだった。


 「そう、もう少しゆっくり動かして。スタティリアが目覚めない様にゆっくりよ!」
 ざわざわっと人々が騒ぎ立てていた。4Fの宇宙船発着場にスタティリアが着いたのだ。
白衣を着たピンク色の髪をした、見るからに若そうな女性が指揮をとって搬送作業に注意を払い
何度も作業確認をとっていた。
 「サクラもがんばっているわね〜。」
 「フィーと同期の人だそうですね、中々気を強そうな女性な印象を受けますが…。」
 「結構プライドが高い子だからね、あの子は。その分、実力は折り紙つきよ。」
 「へぇ…そうなんですね。」
 座り込んで2人が話している間に、目の前が突然暗くなる。
話てる間の一瞬の油断をすきをつかれる形となり、2人が相手を確認するよりも早く跳ね起き距離をとる。
すかさず武器に手を添えると同時に、相手を見返す。
 「フィー姉さん。アルさんも何してるんですか?」
 あら、と拍子ぬけしたフィーとアルベルトが、何といっていいか迷い言い訳を考えたその矢先。
野次馬達が怒声と、悲鳴をあげ、クモの子を散らす様に逃げ始めだしていた。


ガーディアンズコロニー・クライズシティ4F・宇宙船発着所…

 「ちょ…何事よ!?」
 「何かあったようですね…。」
 「ふにぃ。電子レンジに生卵いれて爆発したとかだったりして?(*'¬')」
 即座に臨戦態勢のまま現場に向け走りながら、粛清課とガーディアンズ本部に連絡を取り出す。
フィーとアルベルト、ソロルが現場にたどり着くと同時に、視線の先と連絡が同時に鳴り響く。
 『スタティリア3体が、突如目覚めました!気をつけてください!!』
 スタティリアの全身を縛っていた拘束具と極太のワイヤーを引きちぎり、その巨体が立ち上がる。
錆びた鉄の体の中心部が光輝き、全身にエネルギーが供給されていくのが見える。
 無論、それを黙って見守るフィー達ではない。
周囲を警護していたガーディアンズが、ハンドガンより幾分か重厚なシルエットをした機器を構え
黒く歪んだフォトン弾を複数発射する。
 起動しかけのスタティリアに着弾すると、そこを中心に空間を歪む程の重力場が発生した。
ギシギシと錆びた金属の体を動かそうと、スタティリアがもがくが動けずにいた。
 「アンチ・ディメンション!?」
 「しかも、こんなロストテクノロジーを10丁も容易するなんて…」
 フィーとアルベルトが驚いている最中に、更なる衝撃が襲い掛かる。
スタティリアの上に、1人の青年と、双子の子供が立っていたのだが、親指と中指を弾いた瞬間
スタティリアを縛っていたアンチ・ディメンションが霧消したのであった。


 「なによ…!あんた達何をしているのよ!!」
 フィー達のほんの数m先に、ピンクの髪をした研究者らしい白衣を着た女性サクラが
怒りに任せその青年と、双子にくってかかろうとしている。
 「ははははは…これは失礼。ほんの挨拶代わりですよ。」
青年と双子は、くすくす…と微笑を浮かべ挨拶する。
 「始めまして。僕の名は、被験体1076フラーテル。それから…」
 フラーテルの横から、双子の少女が進みでてスカートの裾を持ち上げ微笑を浮かべ
同じく挨拶するのであった。
 「始めまして。私達は被検体1097、1098、ソロリスと言います。よろしくお願いしますね。」
 ステレオの様に、まったく同じ表情、声で喋る姿になんとも言えない不思議な感覚を受けた
サクラ、フィー達であった。
 「質問に答えなさい!あなた達は、何をしているのよ!!」
 話をしている間にも、スタティリアは完全に目覚めていた。
錆びた鉄の様なボディは金色に輝き、中心部分から迸るAフォトンリアクターのエネルギーの奔流
が稲妻のごとく全身を駆け巡っていた。
 もはやその姿は動かぬ古代の遺産ではなく、レリクスを守る自動防衛システムの一環である
スヴァルタスとなっていたのである。
完全に直立し、その12mはあろうかという巨体を動かし始める。
その度に宇宙船発着場が、グラグラと揺れる。
 「皆、何してんのよ!アンチ・ディメンションを打ち込んで!
  スヴァルタスをここで止めないと、コロニーが壊されるわよ!」
 フィーの怒声に、我を忘れて事態を見ていたガーディアンズに思考回路が戻ってくる。
50丁の銃口が、スヴァルタスに向けられ同時に発射されるが…
 『OS<Ark>起動…<神の拒絶>を発動。』
フラーテルが親指と中指を弾くと同時に、アンティ・ディメンションが先ほどと同じく霧散する。
 「僕達には、そんなものは効きはしない。理解していただこう。
  それでは、僕達が君達の質問に答えようかな。」
青年フラーテルは、微笑を浮かべながら凝視する人々を見下ろしていた。


 人々が、固唾を呑んでフラーテルの次の一言を待っていた。
 「サクラ…あなたを迎えに来たのだよ。そう、僕らの主人である『』が待っているんだ。
  君のその力を、理想の世界を創るためにね…。」
 「はぁ?」
 サクラが、胡乱げな目でフラーテルを睨みつける。
よりいっそう猜疑心を強めた表情で、無意識のうちに身構えていた。
 「僕達は、新たなる世界を作ろうとしているんだ。
  この偏見と、差別と、欺瞞に満ちた愚かでくだらない世界から、文明を消し去る。
  その上で、再びヒトの手による真の平和に満ちた楽園を作り出すんだ。
  そう…あの時と同じ様に…繰り返すのさ。
  楽園を掴むまで、何度でも…何度でも…。手を伸ばすのさ…たどり着くまで…
  フフフ…ハハハッ…」
 手を大きくさながら言うその姿は、信者に教えようとする教祖を思わせるのであった。
その瞳は、自らが正しいと信じる『信念』と確固たる『覚悟』があり、『狂気』が燃え盛る。
 「狂っている…。」
 嫌悪感に身を震わせながらも、気丈にもフラーテルを睨み続けるサクラ。
その様子を悲しげな瞳で見つめた後、フラーテルは嘲りに満ちた微笑を浮かべ続けた。
 「サクラ…君が僕らの言い分をじきに解る時が来るよ。
  君は選ばれたのだ。僕らの僕らのための理想郷である楽園で生き残るための権利を…
  『』が、選ばれしヒト達にとっての楽園へと導くんだよ。
 楽園にたどりつく時王は、絶対なる創造神へとなるのだ!」
フラーテルとソロリスが、地面に降り立ちサクラに手を差し出す。
その手から逃れる様にサクラが後ずさる。
さらに手を伸ばすフラーテルの右手とサクラの間に割って入る影が3つ…。
 「ふざけるんじゃないわよ!
 あんた達が出来る事なんて、驕れる無能な創造神になったつもりでいられるのが限界よ。」
 「あなた達の理論は、とてもじゃありませんが理解できませんね。」
 「ふに…えーと…よくわかってません。」
 フィーがフラーテルの右手首を掴みあげながら睨みつける。
フラーテルが舌打ちをし、乱暴に手を振り下ろしフィーの束縛を逃れ一歩下がると同時に、左手を
フィーの胸めがけ構えると同時に左手にフォトンエネルギーが凝縮していく。
 『アプリケーション<神の裁き>を発動。』
 凝縮されたフォトンエネルギーが、発射されるよりはやくフィーの左足が左手を蹴り上げが早い。
弾き上げられた腕が、射線を上方に変更させていた。
一瞬遅れて放たれる閃光が、大気を焦がす匂いと共に発着場の天井を打ち抜く。
 「あっぶないわね!殺すつもり!?」
 「フフッ…邪魔する者は、殺してもいいとの許可が下りてるんだよ。
  サクラ…そして、そこの被験体1096ソロルを除いた全てをね。」
フラーテルは、微笑を浮かべフィーの瞳を睨みつけていた。


 その言葉にフィー達に、衝撃が走る。
ソロルとサクラに視線を向けると同時に、一気に思考回路が回転を始めていた。
 (え…?サクラとソロルちゃんを狙っているって事は…。
  被験体1076フラーテル…被験体1097と1098ソロリス…ヤヨイ達が言っていた事…
  そうか…やっぱりそういう事か!)
 目を見開き、フラーテルを睨みつけるフィー。
一瞬で、右手で鞭を取り出すと同時に、左手に握られた銃がフラーテルの眉間に向けられる。
 「フラーテル…あなた達は、『エンドラム機関』『イルミナス』どっちの手先よ。」
 「フフッ…なるほど。よく頭の回る女だな。『王』が、君に注意する様にと言うわけだ。
  さすがだね。フィー・イェルハルト。」
 クスクスと笑みを浮かべながらフラーテルが一歩下がると同時に空気が爆ぜる音が響く。
目にも止まらぬ神速の速さで繰り出された鞭の一撃が、フラーテルの右足を殴打すると共に絡め
とり転ばしていた。
 「逃がさないわよ、答えなさい。『』とは、誰の事?あなた達の目的は?
  サクラを捕らえて何をするつもりなの?」
 「やれやれ、質問が多いね。僕がそんな簡単に答えるとでも?」
 ウンザリとした表情を浮かべるフラーテルを睨みつけたままフィーは銃を発射する。
グッ…と苦痛の声を漏らすフラーテル。肩を撃たれたのであった。
 「これ以上痛い思いをしたくないなら、早く答える事ね。
  で・も・痛い思いしたいなら、尋問室でじっくり聞かせてもらうわ。」
 「ご免だね。僕は忙しいんだ。」
 パァンとフラーテルが指を弾くと、縛っていたフォトンの鞭が霧散しフィーも吹き飛ばされる。
そして吹き飛ばされるフィーに、ソロルが巻き込まれて転がっていく。
 「に”ゃーーー!?」
フラーテルは立ち上がり、サクラに笑みを向け手を差し出す。
 「さあ、サクラ楽園へ行こう。『王』がお待ちだよ。」
フラーテルの右手が、黄金色に光り輝き始めた。
 『アプリケーション<神の導き>を発動。』
 「させません!」
 アルベルトの杖が光り輝きディーガを放つが、先ほどと同じようにかき消され吹き飛ばされる。
それとほぼ同時に、フィーの鞭がフラーテルを狙いつけるが、ソロリスが間に入りかき消した。
 「「フィーお姉さま。フラーテルお兄様の邪魔はしないでください。」」
 ソロルをより幼くした容姿の双子が、頬を膨らませ怒った表情をしていた。
その時フィーは、自身にある違和感を覚えたのである。
その場に居合わせる者達が、感じないほどのわずかな違和感…。
 (アルを吹き飛ばすと同時に、私の攻撃をフラーテルがかき消さなかった…。
  攻撃の間のわずかなタイムラグ…その間に、ソロリスの助太刀…。
  と…いうことは。)
 勢いよく立ち上がると同時に、ソロルの手を握り片手で起き上がらせる。
 「ソロルちゃん、フラーテルとソロリスの吹き飛ばす能力わかる?」
顔をぶんぶんと、横に振るソロルであった。
 「データが破損が見られるため、能力解析と発動条件が解析できませんとでますよ?」
 「しかたないわね…(=ω=) じゃぁ、封じれる?」
 「ふにぃ…。一回だけなら?」
 「アル!同時にやるわよ!」
 「あいたた…。了解しました。」
フラーテルが舌打ちし、ソロリスが身構える。
 「スヴァルタス!コロニーを破壊しろ!」
 目を見開くフィー達。その一瞬の驚きが行動を一瞬遅らせた。
フラーテルとソロリスの<神の拒絶>によって、フィーとアルベルトを吹き飛ばしたが、ソロルが
空間を捻じ曲げる事ができる<神の抱擁>により、衝撃をソロリスに跳ね返していた。
 「サクラさんに、手を出すのはダメですよ?」
 フラーテルから逃れるように、サクラが小さなソロルの背中の後ろに逃げてきた。


 「ソロル…。君は、あの時と同じように邪魔をするんだね。」
 フラーテルが悲しげな瞳を浮かべ、ソロルを見るであった。
その瞳の奥底には、悲しみと絶望にも似た暗い色を讃えていた。
 「え…。えーっと?フィー姉さんの饅頭を盗み食いした事ですか?(*゚□゚)」
 その言葉に、より一層深い悲しみにとらわれるフラーテル。
 「違うよソロル。僕はあの日あの時、君に約束したじゃないか。
  楽園へと導くと。そう、『箱庭を騙る檻の中』(アーク)でね。」
 「アーク…?」
 その言葉を聞くと、ソロルの体が突如震えだした。
目は泳ぎ、口は恐怖からかカチカチと鳴り、恐怖に泣き出しそうになる自分を抑えるのがやっとの
様子の有様である。
 (アーク…?アーク!すごく、すごく大事な事…楽園…私、お兄様、そして裏切り…。)
 「そう、アークだよ。ソロル。」
 顔をしかめながら、ソロルが苦しそうな表情を浮かべる。
それは、とても大事な事を思い出そうとして思い出せない苦しみか。
それとも、自らの身では思い出したくないほどの凄惨極まるほどの恐怖を体が覚えているからか。
 「…おもいだせません。」
 「なら、思い出せてあげるよ。ソロル。」
 『OS<Ark>起動…<神の記憶>を発動。』
 残酷な笑みを浮かべフラーテルの右手が光り輝きはじめる。
怯えるソロルを無視し、銀色に光り輝く右手が頭を優しくなでる。
その瞬間ソロルの全身が、銀色に輝くとそのままうつぶせに倒れてしまった。
  フラーテルがその様子を見て、口の両端をつりあげながら目には漆黒の炎を宿しながら笑う。
見る者に、不安を感じさせる狂気に満ちた笑みであった。


 「ソロルちゃんに何をしたのよ!」
 「返答しだいでは、僕も許しませんよ。」
 フィーとアルベルトが怒りと共に起き上がる。
クククッ…と口に手をあて、笑い出すフラーテル。
 「記憶を呼び戻させたんだよ。…そしてソロルは、君達の敵になるんだ。」
ソロリスが、共に両手を合わすと空中に巨大な星霊紋が浮かびあがり、巨大なゲートが誕生する。
 『OS<Ark>起動…被験体1097・1098ソロリス・デュアルコアシステムによる多重起動に成功…。
  
<神の箱舟>による「Ark研究所」の遠隔操作に成功…。
  
<神の導き>による時空間転送システムの起動に成功…。
 
<神の箱舟><神の導き>を合成し<神の遺産>を発動。』
ゲートから、巨大なスヴァルタスが200体にも及ぶ数が出てくるのであった。
 「…そして、このコロニーも消えてなくなる。止めれるものなら、止めてみせてほしいな…。
さあ、スヴァルタス!跡形もなくなるほどに、コロニーを破壊するんだ!」
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