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Bland New Tea☆Time♪

Bland New Tea☆Time♪

このページは、管理人が書いたPSU小説となります。
(HP小説の無断転載を禁じます。)
PSU(Phantasy Star Universeの略称)は、SEGAの登録商標です。
作品の著作権は、作者にあります。
なお小説の内容は、ゲームの攻略等を示す物ではありません。
小説はオリジナル要素を、多分に含みます。ご了承の上お読みください。
ご理解頂けない場合は、ブラウザバックでお戻りください。
なお小説内に登場する企業・組織・団体は架空のもので、実在する企業・組織・団体とは無関係です。

Phantasy Star Universe Concert 本編12話pso-novel

「Movement of the darkness(闇の胎動)」
ガーディアンズコロニー圏内…宇宙航路…

 「本部応答願う。こちら、ガーディアンズ機動警護部所属リフル。
  SEEDの出現を目視で確認。これより迎撃に向かう。本部援護を頼む。本部聞こえるか?」
 リフルが、キャストの耳に搭載されている無線機器から本部に通話をかける。
 「応答。こちらガーディアンズ調査部所属ルウが、代わりに担当します。」
 「ルウ!SEED迎撃の兵団は!?」
 「慌てないでください。先ほどもらった情報を元に動かせるガーディアンズ保有の戦闘機を
  順次配置しています。」
すかさず、別の無線が傍受された。
 「こちら、ガーディアンズ航空警護部第4649隊…配置完了。迎撃に入ります。」
 重火器装備が展開され、一斉に攻撃が始まる。
その光景に見とれる余裕などなく、エリス達も行動を開始したのだった。
 「距離9000…迎撃効果範囲内に突入にゃ!」
 「んぅ〜…主砲および、各種SUVウェポンシステム…オールグリーン…展開完了…ぽちぽちっと♪」
 大型PPTシャトルを操る神条摩樹奈(かみじょう まきな)とエリス嬢が準備完了を告げる。
 「よし…戦闘開始!全弾くらわせてやれ…あのくそったれなSEED共にな!!」
 エリスの咆哮と共に、放たれた砲撃の数々がさながら花火のように美しくSEEDを迎え撃っていく!


同時刻…
ガーディアンズコロニー・クライズシティ4F・宇宙船発着所…


 上空を見上げれば激しい爆発音と共に、SEEDを打ち砕く閃光がフィー達の表情に
光と影のコントラストを表す。
目は大きく見開かれ血走り唇は引き歪み、もはや正気の欠片すら残っているのかすら疑わしい表情で
被検体1076フラーテルは叫び続けていた。
 「死ね!死ネ!シね!すべて…すべテを破壊しつクせ!!こワれ…ろ!何もかも!!
  そシて…理想の楽園を生み出す礎となるガいい!!」
 「させるかっ!」
 フィーのムチが、音速を超え横なぎに全フラーテルの首にむかって放たれる。
その一撃を1076フラーテルが『神の拒絶』で無効化し、背後から迫ってくるアルベルトを
1074フラーテルが迎え撃つ。
 そして、アルベルトと共に落ちた50人のガーディアンズが援護射撃を繰り出すが<神の拒絶>により
かき消されてしまう。
 「ちっ…あの神の拒絶ってのは厄介ね。どんな原理なのよ?」
 「にゃ…フィー姉さん?あれは、フォトンをキュとしてドカーンですよ?」
 フィーとゲオルギウスが、ソロルの発言に顔を見合わせ不敵な笑いを浮かべる。
 「フィー、活路は開く。」
 「わかったわ。」
 2人が瞳に闘志を燃やし、武器を強く握り締めた。
それを快く思わないフラーテル達が、顔を引きつらせ睨み付けるのだった。
 「気に入らない…気に入らないぞ!なんだ、その瞳は!?
  ソロルの一言で解ったような顔は…今更、何ができるというのだ!
  もう遅いのだよ…手遅れだ!もう1時間もしない内にガーディアンズコロニーはSEEDに侵食され
  墜落する運命なのだ!! チェックメイトなのだ!!!」
 「はっはっは…冗談は日曜だけにしてくれたまえ。
  まだ打開策は残ってるのに、投了する者などどこにいるのかね?」
 「そういうこと。」
 フラーテルの激昂に、涼しい顔で答え一気に動き出す。
フィーとゲオルギウスが一気に間合いを詰め、前方に盾を張るようにアンチ・ディメイションを立て続けに発射し
フラーテルの視界を覆いつくす。
 「…何を考えている?」
 <神の拒絶>を発動しアンチ・ディメイションを無効化し、2人を吹き飛ばしたと思った刹那。
フラーテルの脳内に、警告アラームが鳴り響く。
 『Warning! 攻撃感知。…回避不能。』
 驚き眼を見開く1074と1075フラーテルが最後に見たのは一筋の閃光。
左右から迫る斬撃が、一撃で2人の頭部を下から切り上げる様に切断し、返す刃で1071と1072フラーテルの
頭を破壊したのだった。
 「なっ…」
 1075フラーテルが声を出した瞬間に、フィーの鞭が首を切り落としゲオルギウスが細切れに切り刻れた。
 「これでっ、終わりよっ!」
首を失った1075の体がフラフラとし始め抱え込んでいた1076フラーテルの首を落としかける暇さえ与えずに
フィーの裂帛の気合と共に、音速を超えた神速の一撃が叩き込まれる!
 ドガアアアアアア!!という凄まじい破砕音が、その一撃に込められた気合が物語っていた。
ヘシ曲がるタイルと巻き上がる粉塵の中を、にこやかな笑顔で近づくゲオルギウスとしかめ顔のルウが
フィーに近づいてくる。
 「はっはは…ご苦労ご苦労。」
 「お疲れ様です。…ですが、予想以上に損害が出てしまいました。それと、フィーさん」
  「な、なによ?(=ω=)」
 「出来れば、頭部を損傷させることなく確保して貰えればよかったのですが…
  うまくいけば、『エンドラム機関』及び『イルミナス』に関する様々な情報と共に、被験体1096ソロルの所有
  する各種能力と先ほどの暴走とも取れる不可解な暴走原因が解明できると思われましたが…
  非常に残念です。」
 「それについてだけど…頭部を残していても、そのままでも能力を使う可能性が残っていたこと。
  危険性を排除するのをと、狂気に侵されまともな思考状態ではフラーテルではまともな情報は得られる
  可能性が非常に低かったでしょ?
  『エンドラム機関』及び『イルミナス』に関する情報なら、そこのフラーテル達の体が
  残っているから胸部にあるはずの補助記憶装置から読み取れるんじゃない?
  それと私個人としては、ソロルちゃんの暴走の原因は過去の記憶から来ているんだと思うのよ。」
 「というと?説明を求めます。」
 「フラーテルからの先ほどの発言を聞いていたでしょ?
  何回も発していた『楽園』というキーワード。きっと、フラーテルとソロルちゃんはソコで何かがあったのよ。
  フラーテルが妹であるソロルちゃんのために、必死になってまで用意しようとしたもの…
  狂気に走らなければならなければ、正気を保てない程の悲劇とかね。」
 「…無理矢理にフラーテルが、過去の抑圧されたトラウマとなる記憶を呼び覚ました事による
  フラッシュバッグによりもたらされた結果による暴走という見解ですね。」
 「そうね。…ソロルちゃんもフラーテルも悲しい過去があって、妹はあまりにつらすぎる記憶を思い出さない
  ように忘れ去り、兄フラーテルは忘れることが出来ず、かつて幸せだった頃の『楽園』を取り戻そうと何度も
  足掻き続け自分の体と妹の複製を作り上げ、幾度となく人生をやり直し続けて精神が壊れたのかもね。」
 「…可能性はありますね。」
 「そう、2人とも本当はもっとも救われなければ人達なのよ。
 そこに転がっているフラーテルの補助記憶装置から幸せだったころの記憶だけを抜き取り、
別の体に入れてあげればきっと2人は、もう一度幸せだった頃に戻れるんじゃないかしら?
私もゆっちゃん達も…粛清課の全員が、いえ、ガーディアンズ皆が支えになってあげればきっとね。」
 「そうだな。それが、一番いいだろな。」
 「…わかりました。各種必要な情報を抜き取り、あらゆる危険性を排除したのちPM(パートナーマシーナリー)
  のボディを用意してもらえるか、上層部に掛け合ってみましょう。」
 「粛清課からも、掛け合うことを約束しよう。」
 「みんな…ありがとう。」
 思わず涙目になるフィー達の雰囲気をぶち壊すように、あざ笑う声が高らかに響き渡る。
 『ハッ!ははははははははははははははははははははははは!!!』
 否、その声は人の発する声ではなかった。
耳から聞こえる声ではなく、脳内に直接送り込まれた音声ともいうべき代物であったのだ。
その笑い声は、ヒトが生理的に嫌がる音にも似た不快な響きが含まれたいた。
それと共に、花火のように激しい閃光と爆発音がいつの間に止み全員の視線は一点に集中していた。
フラーテルがコロニー上空に空けた歪んだ空間から響いてきていたのだった。
 『はははははははは!…笑わせるな。なんの茶番だ?』
なおもSEEDを降らせ続ける歪んだ空間が、さながらヒトの口のように歪んだ笑みを変わり始める。
 その瞬間、その場にいた全員の動きが止り視点は、その歪んだ空間に惹きつける。
人は想像もできない事態に陥った時、理解し危険か危険でないかを認識しようと無意識に動きを止めてしまう。
 頭の内側を虫が這いずり回るような嫌悪感を催す現象に、脳が混乱し全ての行動を停止させてしまったのだ。
 『フラーテルを救う?世界を救う?…笑わせるな。貴様らがどんなにあがこうと世界は滅ぶ。
  さあ、フラーテル…もう一度力を貸してやろう…。貴様が望む楽園をつくりたいのならな…』



 歪んだ空間から発せられる闇の力が、バラバラに粉砕されたフラーテル達の体をつなぎ合わせ姿を元に戻そう
とし始めた、が…その闇の力を弾く光り輝く強大な盾を、フィー達は見たのだった。
 『OS<Ark>起動…プロテクト解除コード<十戒>入力…「第ニコード:主の名をみだりに唱えてはならない。
  …成功。LV2プロテクト解除…単一アプリケーションの複製発動の許可。
 
<神の盾>の連鎖発動…過負荷率95%に上昇。
 
<神の完全なる盾>…発動。』
 「ふに…。思い出しましたよ。ダーク・ファルス…お前のせいで、全てが壊されてしまったこと…
  フラーテルお兄様を、渡しませんよ?」
 『ククッ…闇に魅入られ、旧文明を破壊する引き金となったお前が…?
  ハッ…闇の巫女ソロルが?ハハハハハハハハッ!!
  実にくだらないな…。ならば再び、貴様に選ばせてやる…。』

 歪んだ空間が大きく口を開けるように、その内部から全長1kmになろうかという超々巨大SEEDを生み出す。
 『さあどうする?
  このまま光の意思を保ったままコロニーごと滅ぶ道を選ぶか?
  SEEDから皆を助けるために闇の力を受け入れ、滅びの力を
  手に入れるか! さあ選ぶがいい、闇の
凶巫女(まがみこ)ソロルよ!
  ハハハハハハッ…フハハハハハッ!』

 刻一刻と、超々巨大SEEDが姿を現しコロニーに落下しようと姿を現し始める。
ソロルは、過去を思い出しながら再び同じ選択を選ぶ羽目になるのを決意するしかない事を識る。
 「フィーお姉さま…どっちを選んでもSEEDによって世界は滅ぼされます。
 だから…だから…闇を受け入れ超々巨大SEEDを滅ぼした後…殺して…。」
ソロルの悲痛な願いに、フィーはソロルの両肩を掴み怒る。
 「駄目よ!ソロルちゃん死ぬなんていったら、絶対に駄目よ!
  ソロルちゃん、フラーテルあなた達兄妹は、絶対に幸せにならないといけない!
  こんなふざけたダーク・ファルスだか、SEED共に負けちゃ駄目なのよ!」
ソロルを強く抱きしめるフィーを、あざ笑うようにフラーテルの声が聞こえてきた。
先ほどの闇の力によってだろうか、被験体1076フラーテルの姿が復元されていたのだった。
 「クククッ…そう言ってもらえるというのは嬉しいですがね…。
  今の状況をどうするというのです?1万2千年前から私達はずっと楽園を求めて同じことを繰り返してきた。
  どうやって変えれるというのです?ダーク・ファルスの操り人形でしかない私達が…」
 自嘲気味にフラーテルは笑い続ける。
その姿に、この兄妹が幸せを求めて、ずっと苦労し、苦しみ、悲しみの果てに狂気に走るしかなかったことを
実感したフィー達であった。
 「それは…」
 フィーが答えに戸惑い、声をかけようとした時…上空から大音量のスピーカーごしの音声が流れた。


宇宙船発着所・上空…

 「諦めるな!ソロルちゃん、フラーテルあんた達が、
  どんなに諦めても私達がいるのを忘れないで!
  過去がどんなに凄惨で地獄であっても、変われる!
  私達がいる!仲間がいる!仲間を頼れ!
  一人一人の力はどんなに小さくても、皆の力を大きな力になる!
  きっと、どんな絶望であっても乗り越えれる!
  希望を掴むために!」

 その声は、エリスの声であった。
想いの全てを載せた精一杯の声であった。
 「希望を持てか…フッ…ならば、状況を打破してみせろ!
  闇による滅びの力に頼ることなく、人々の希望の力とやらを!!」
 ソロルにしか知らなかったが、そう叫ぶフラーテルの声はかつての希望に満ち世界を救うための研究を
していた頃のフラーテルの瞳に戻っていた。
 「フィー、ゲオルギウス…。もし、これが成功すれば私の知っている全ての情報を教えよう。
  出来るなら、救ってくれ。私達兄妹を…闇の狂気による悪意の連鎖から…」
 「約束しましょ…だが、この事態を打開するためには君達の力も必要よ。
  手伝ってくれるよね?」
 「ふに、フィー姉さんの頼みなら、断れませんね。ご飯たべれなくなりますし……(*'¬')じゅるり…」
 「わかった、手伝おう。」
 「よし、作戦開始だ。」
 事態を見持っていたオーベル・ダルカン総統の声が、全ガーディアンの通信素地に響く。
 「コロニー全ガーディアンズに告ぐ、これより超々巨大SEED殲滅のための作戦行動に入る!
  詳細な作戦指示は、ルゥを経由して送る。…全体、健闘を祈る!」
 「応!」
 全員の意思が一つとなり、さながら精密機器のような俊敏かつ正確な行動に移っていった。
超々巨大SEEDの落下ルートにいる居住区の人間の避難…
それが終わると、被害を最小限に抑えるためにコロニーから居住区など重要な施設を切り離していく。
 それと同時に、ソロルとフラーテルが上空の歪んだ空間を閉じようと必死になって働く。
ゲオルギウスの指示に従って、切り離した居住区をクッシュン代わりにして打ち出されるアンチディメンションを
ビリヤードのように打ち出し超々巨大SEEDに当て、わずかずつであるが動きを停滞させ始めた。
 その機を逃すはずもなく、ルゥの指示によって戦闘配備されていた戦闘機が一点集中砲火で破壊に掛かる。
目も眩むような凄まじい爆発が起き続けるが…


 「くっそ…ここまで、幻視の結果と同じか…」
 奥歯をギリッ…と噛みながら、エリスは超々巨大SEEDを睨み付ける。
意を決して、エリスは次の指示を出すと、エリス達の乗る戦闘用PPTシャトルの両翼につけられた
巨大な箱が変形を始める。
 まず箱が開閉し内部から、小さなパラボナアンテナの様な物がPPTシャトルの周囲を回転し始めると
箱自体も継ぎ目にそって開き、巨大な鏡面体のような形にPPTシャトルを覆うのであった。
 「よし、実験用フォトン放出用パネル展開完了したぞ。」
 「んぅ〜同じく、エネルギー供給パイプ、異常なしだよ〜。」
 「エリ〜。フォトン強化用魔方陣の準備完了だよ☆」
 「システム、オールグリーン。作戦行動に移行するにゃ。」
 「みんな、ありがと…いくよ。実験用L.S.Sシステム運用開始!」
 PPTシャトルの中心部に設置されたガラスのような『星霊紋』が刻まれた透明な球体に、エリスが気合を込め
フォトンエネルギーを流し込んでいく。
それと同時に、球体が銀色に光り輝きながらPPTシャトルに複雑に配置されたパイプを通ってエネルギーが
駆け巡っていくと、PPTシャトルの周辺に半透明のフォトンの膜のシールドが展開しだしたのだった。
 「ラティス・シールド・システム全力展開!」
 ガーディアンズ全兵力をあわせた集中砲火により、わずかずつであるが軌道を変えてきた超々巨大SEEDで
あるが、そのあまりの巨体ゆえにガーディアンズコロニー半壊は免れぬ段階に差し迫ってきた。
光り輝く球体となったPPTシャトルが、軌道変更を推し進めようと巨体の側面に押し当たる。
 「………!?」
 凄まじい衝撃と共に、船体全体がきしみ始める。
そして急速にL.S.Sシステムはおろか、PPTシャトルから緊急事態を示すアラームが鳴り響き始めた。
 「えぇぇ…!? L.S.Sシステム運用エネルギー50%に低下…シャトル燃料…急速に減少中…残り70%」
 「むむむ…予備フォトン電源から供給を開始しますにゃ…現在の減り速度から換算して残り300秒にゃ」
機体制御と、システム運用にエリス嬢と神条摩樹奈(かみじょう まきな)が大慌てで作業しながら叫ぶ。
 「原因究明完了…超々巨大SEEDによるフォトン捕食が原因と…。マリア、魔方陣術式の大幅強化を…」
 「う…うん!わかった☆」
 「エリス…L.S.Sシステムの強化補助はまかせておけ!」
 「おっけ!…皆、力を貸して!」
 限界を超えて、エリスがフォトンエネルギーを抽入していきより巨大に明るく光り輝くL.S.Sシステムが
超々巨大SEEDの落下速度が、わずかに落ち始め落下軌道がさらに変わり始めた。
  「現在予測されるコロニー被害は90%から70%に減少…ガーディアンズ航空警護部第2424隊は、
 リフル達の船体の側面から、援護爆撃による軌道変更をお願いします。続いて…」
 ルゥの指示通りに、航空警護部は果敢な働きを見せる。
しかし、決定打にかける軌道変更であった…。
 「コロニー被害60%に低下…コロニー激突まで、残り180秒。一般住民の避難は、どれだけ済みましたか?
 …70%?…急いでください。」
珍しくルゥが焦ったような声で、指示を出していた。
 「くそっ…出力が足りない…」
 エリスが全身から汗を噴出し、ギリッと奥歯をかみ締める。
限界を超えたフォトンエネルギーを放出するということは、生命力の消費を意味する。
最後に待つのは…ただ死であるのだ。
船体がギシギシと悲鳴を上げ、鳴り止まない警報音。
 「フォトンエネルギーを集めれれば…」
その時、ソロルから通信がかかる。
 「ふに…通話が切れてなかったので、話は聞きました。
 えーと…フォトンを集めて送ればいいんですよね?」
 「うん…そうだけど…できるの?」
 「できますよ〜…今は負荷率100%に近いので送れるのは、一瞬ですけどね〜」
 「上等…!船が持つのは…あと何秒?」
 「船体及びコロニー激突まで、残り90秒ですにゃ!」 
 「じゃぁ、60秒まってくださいね〜」
通話が終わると、フォトン入力装置の場をマリアに代わってもらうエリス。
 「マリアちゃん60秒…船体を持たせて…」
 「うん☆まかせて!」
 「うちは、その一瞬に全てをかける!」
 L.S.S(ラティス・シールド・システム)の制御球から一旦離れたエリスは、フォトン放出から
フォトン吸収へと体内循環を切り替える。
 「すぅぅぅ…はぁぁぁ…よし…少し体力も少しずつだけど回復してきてる…。」
 (肉体が持つか…それが心配だけどやるしかないか…。) 
全身の筋肉と骨がギシギシと痛むのを知覚しながら、何度も手をワキワキと動かしながら確かめる。


宇宙船発着場…内部

 「…ソロル。」
 「ふに?…はれ?あれれれ!?目がぐるぐる…うにゃああ!?」
 フラーテルが話しかけ、ソロルが振り向いた瞬間…目眩を起し倒れそうになるの抱きとめるフィー。
焦りながら、顔面蒼白なソロルの顔を眺める。
 「はれ…フィー姉さん?大丈夫…まだ動けなくなったわけじゃ…うにゃ!?」
フィーの手を離れ、立ち上がろうとした所でガクッと膝から倒れこむ。
カツカツ…と近づいてくるフラーテルが手を差し出し、ソロルの手を握る。
 『WARNING!WARNING!WARNING!WARNING!過負荷率…100%…エラーコード発令。
  アドヴァンスド・フォトンジェネレイター内のフォトン残量が無くなりました。
  フォトンエネルギー供給・自然回復コマンド起動準備完了…スリープモードに移行まで
  カウントダウン開始…10…9…8』

 「…ソロルちゃん!?」
 「時間がない…ソロリスを俺の素に!ソロルをうつ伏せに寝かせて、首元の供給路を開けてくれ!」
 「へっ!?」
ほぼ反射的に、うつぶせに寝かせフォトン供給路を開ける。
 「フィーは、フォトンをソロルに注いでカウントダウンを停めてくれ!ソロリスは!?」
 「…ソロリスも寝かせて、供給路を開けばいいのか?」
 「ああ…」
 『OS<Ark>起動…<神の聖杯>を起動。』
 2人のソロリスから抜き取られた赤く光輝くアドヴァンスド・フォトンエネルギーの奔流。
聖杯の形に留められながらも、凄まじいエネルギーのウネリがゴオオ…という風斬り音となって周囲に
こだまする。
それを両手で抱えながら、フィーとソロルを見つめるフラーテル。
今までの剣呑な表情は一旦消え失せ、初対面の時と同じ穏やかな表情でフィーと視線を交わす。
 「俺は…いや僕達は、ソロルに全てのエネルギーと記憶を引き渡します。
  故に、事後は全てを君達とソロルに任せることになるが…頼みましたよ?」
 「ええ…成功させてみせるわよ。皆の命を守りたいという人の意思が集まれば、理論上では可能なのよ?」
 自信と周りの全ての人への信頼なのか…その輝く瞳を見ながら、フッと笑顔を見せるフラーテルであったが
一瞬にして、表情を狂気に走る者の目つきと口調へと変えた。
 「ならば証明してみせろ…。出来たら、俺はお前達を信じてガーディアンズへの協力を惜しまない。
  だが…出来なければ御終いだ。コロニーはおろかグラール太陽系全てが終わりを迎える。
  俺が俺達が…破壊神の元に、もう二度と人を信じることなく…今度こそ作ってみせる…。
  俺とソロルが幸せに暮らせる楽園を…」
 現在の一縷の望みと、かつての幸せだった頃の追憶と、最悪の展開を想像しての憎悪と狂気…全てが
ないまぜとなってフラーテルの瞳が、揺れ動いていた。
 「フッ…だったら信頼させてあげるわよ。出会って新しく生まれ変わったソロルちゃんと…私達がね
  今は信じられる仲間がいるという事をね!」
 「ならば見せてみろ!」
 フラーテルの叫びと共に、ソロルに全ての記憶が再生されると同時にエネルギーが注がれていく。


 「…にゃ?皆さん集まってどうしたんです?」
 ソロルが目覚めると同時に、フィーが思いっきり抱きしめる。
 「…よかった。」
 「にゃ?なんだかとっても悲しい夢と、懐かしい夢を見ていた気分です。にゃふにゃふ。」
 「…フィーくん。ソロルくん。今は、抱きしめあっている場合ではないのだがね。」
 クイッとゲオルギウスが指差した、エリス達が乗るPPTシャトルが徐々に高度を下げ始めながら
LSSシステムの防御シールドも、今にも消え入りそうな程に薄くなっていた。
 「そうよ。ソロルちゃんLSSシールドに膨大なフォトンエネルギーを供給すればいいんだけど
  周囲か他の人からフォトンを集めてPPTシャトルに照射できる様にできない?」
 「あーありますよ。まず人を集めるか、助けたいとか守りたいという想いをこの場所に集めて
  貰えればできますよー?」
 ソロルのたどたどしい説明を受けて、ガーディアンズ内部でも慌ただしく動いていた。
 「ソロルちゃん、周りの集めれる人数全員集めてきたけど…皆手を繋いでソロルちゃんの両肩に手を
  添えるだけでいいの?」
 「ふに…えーと、コロニーを守るとか、大切な人を守りたいって気持ちも載せてくださいね?」
 「ソロルちゃん抱っこじゃダメなのか…(=ω=)」
 「にゃふにゃふ…(*'¬')」
 数々の指示を出していたゲオルギウスとルゥが近づき、準備完了が出来た事を告げる。
 「それではいきますよー!」
 『OS<Ark>起動…プロテクト解除コード<十戒>入力…「第四コード:あなたの父母を敬え。
  …成功。LV4プロテクト解除…レッドタブレットの補助記憶領域からの能力ブースト効果発動。』

 オォォン…という音と共に、ソロルのキャスト装甲の継ぎ目からスライドしていき迸る赤き燐光と
共に、一回り大きくなったソロルの身体が空中高く浮かび上がる。
そして、キャスト装甲が完全にパージし、まだ幼女と見間違う光輝く裸体が見えた。
心臓の様に、ドクンドクンと脈打つ赤き燐光は胸部のレッドタブレットが発するモノなのだろうか?
 そして、周囲…いやガーディアンズコロニーの総意ともいえるフォトンエネルギーの奔流が虹色の光を
発しながら、ソロルに集中していくのであった。
 虹色に光輝く天使と化した少女と化したソロルは、フィー達全員が知っている黒髪黒目の少女ではなく
本来の…被検体1096ソロルとなる前の紫髪と紫目をした幼き少女に変わっていた。
 「…皆の想いを載せて…頼みましたよ?エリスさん皆さん。」
 左手を突き出し、右腕を弓を絞るかの如く構えてフォトンの奔流がついに放たれた!
 その姿をフラーテルが見ていれば、ずっと夢見て創りだし壊れていったかつての妹の姿がここにあると。
どんなに姿形が変わろうとも、本当の優しい少女の魂はここにあると気づいたであろう。


宇宙船発着所・上空…

 「エリ〜…さすがにもう無理だよぉ?」
 マリアが全身から滝のような汗を垂らしながら必死にLSSシステムの保持を頑張っていた。
 「出力低下中にゃ!墜落まで予想残り時間30秒…」
 「俺が、『アインシュタイン』を起動して墜落時間を数秒遅らせれるぞ?
  LSSシステムに機関部のエネルギーを回したらどうだ?」
 「んぅ〜…機関エネルギーの回路を全てLSSに回して…うぅ〜…船体が持たないかもー?」
 「システムオールレッド発令にゃ!残り時間20秒…まだかにゃ!?もうオシマイにゃー!」
ついに耐え切れなくなった神条摩樹奈(かみじょう まきな)がパニックを起こして泣き始める。
無言でリフルは、アインシュタインを起動し船体を保持しようと頑張りエリス嬢はLSSシステムへの
エネルギー供給回路を一点に集中させていた。
ギリッと奥歯を噛み締めながら、エリスはマリアの傍に寄る。
 (…よし、20%ぐらいは回復した!間に合うか?)
 「エリ?ソロルは大丈夫なのかな?」
 「うぅぅ〜…美味しいお店予約してあったのに〜…」
 「さっさと帰って、俺は寝たいぞ!」
全員の表情に、諦めの感情が締めかけた瞬間ソロルの通信が流れる。
よっしゃあ!イクぞ!というエリスの声と共に全員の表情が、一気に気合が入った。
 「ここが正念場だ!皆生きて帰るよ!」
 フィー達の想い…ソロルとフラーテルの願い…そしてコロニーに住まう全ての人々の気持ちが渾然一体と
化したフォトンの奔流が、PPTシャトルのフォトン吸収装置を通してエリスに流れ込んでいく。
生きたい…大切な人を守りたい…SEEDなんかに負けてたまるか…助ける…助かりたい…
人々の持つ生命の脈動が、エリスに活力を与え…フォトンが風のように渦巻き、さらに活性化していく。
全てのフォトン属性である、火…氷…雷…土…光…闇…無属性全てが交わり七色のフォトンの奔流となった
LSSシールドが爆発的な速さで巨大化していく。


 「おおおおおおお!」
 固唾を飲んで見守っていたコロニーの人々に歓声があがった。
 目に見える速さで超巨大SEEDが軌道を逸らしていっているのだった。
だが…そこで人々は再び、ヒッ…という恐怖を飲み込む悲鳴を抑えながら起こり始めた事象を見つめた。
 「なっ…なにあれ?」
 フィーが緊張をはらんだ表情で、ソロルとゲオルギウスに回答を求めた。
しかし答えるものはいない。
ソロルは元の黒髪のキャスト少女に戻り、フィーの腕の中で寝息を立てていたしゲオルギウスはおろか
避難用シェルターや避難用宇宙船に乗り込もうとしていた人々全てが、起こっている一点に視線を釘付に
されていたのであった。
 おお…なんということだろう。
超巨大sEEDは、さながら心臓の様に赤く脈打ち中心部から表皮が縦に裂け始め瞳を見開き始めたのである。
瞳は愉悦といった感じに歪んだと思うと、睫毛と思わしき触手が無数が生えPPTシャトルを包み込んでいく。
ギシッ…といった音が聞こえてきそうな勢いで握りつぶそうとするかのように球形を形作っていた
LSSシールドが歪んでいく。
触手の狭間から見える虹色のフォトンの燐光が辛うじて、未だにPPTシャトルの無事を伝えていた。
PPTシャトルへと人々の総意がさらに強くなってフォトンを輝かせていく…
ソロルとPPTシャトル内部にいるリフルが同時に警報アラームを鳴らし始めたのである。
 『WARNING!WARNING!WARNING!…緊急事態発令!強制封印プロテクト解除コマンド確認!
 OS
<Ark>及び<ABYSS>同時起動…封印戦略プログラム「シンプライスの門」…アクセス開始。
 「
Ark研究所」「ABYSS研究所」…起動開始…
 封印戦略プログラム…アクセス成功…OS及びアプリケーションのボリュームチェック完了…修復完了。
 惑星間共有ネットワーク…
「ムゥト」「ディッツ」「ポゥム」起動準備完了…
 最終戦闘データのチェック…封印戦略プログラム最適化のため共有ネットワーク端末…
 認識完了…ダウンロード開始。』

全ての人々の意思が渾然一体となった時、封印されていた記憶の扉が開いたのであった。


???…

 「ははっはは!いいぞ!いいぞ!さすがだ!最終最大最強にして、絶対無敵の防衛拠点!リュクロス!
 このまま、SEEDごと全て殲滅できるぞおおお!すばらしいいいい!
 このままいけば、我らが太陽王カムハーン様に認められれば!もしかして!いやもしかしなくても!
 ボクちゃん、元帥大将になれちゃうかもおおおお!うひょおおおおおお!
 そしたら、そしたら!女の子たくさんかこってハーレムだってええええ!夢じゃあああなあああい!」
 「げげげ、元帥!ももも、妄想はいいですから!ききき、緊急事態です!」
 「むむむ!ボクちゃんの妄想を邪魔するとはけしからん!何事かな!?」
 「さささ…最上級SEEDが…ダーク・ファルスが突如現れました!」
 准将のパニックと恐怖に歪む顔に、元帥の顔が引き締まる。
さきほどの妄想にだらしなくヨダレを垂らしていた顔から、軍人の顔に戻っていた。
 「どこだ!どこに現れたというのだ!!3惑星を監視するモニターに表示されとらんぞ!」
 「ややや…ヤツは中です!このリュクロスの中です!」
 「なにぃ!?防衛はどうなっている!防衛拠点最強のスタティリアがいるだろう!
 ディラブレイズだ!5体全部投入しろ!ヤツさえ倒せば、他のSEEDはどうにでもなる!
 それと、次戦力フラーテルとのソロルシリーズもだ!」
 「そそそ…それが…突如出現したダークファルスは…ソロルシリーズの兄…フラーテル…
 しかも…オリジナルの方です…。
 反乱を起こしたフラーテルシリーズを、同じくSEED感染させた抵抗体をもっていた限りなくオリジナル
 の肉体をもったソロル・セカンド及びソロルシリーズが全て殺害しました…」
 「なんだ…全て終わったあとなのか…」
 リュクロス全体を揺るがす激震が襲う…
3惑星の先端…天体の配置として四角となる場所にあるリュクロスに地震が起きるはずがない…
これは、内部からの爆発の影響であった。
それと同時に、緊急連絡が入る。
 「伝令!伝令!緊急措置です!封印システム「シンプライスの門」の強制発動です!」
 「ばかな!ボクちゃんは、そんな命令をだしてないぞおおお!?」
 「太陽王直々の命令です!早急に退避しないと、封印空間に飲み込まれますよ!?」
 「ななな…なんで急に!?」
リュクロスの中央指令室の画面が変わり、太陽王カムハーンの姿が表示される。
 『フッ…私の命令だ元帥。』
 「こ…これは太陽王様!な、なぜこんな急に!私たちを見捨てになるのですか!?」
 『フッフハハハ…フラーテル…いやダーク・ファルスめ。よくもやってくれたものだ。
 元帥…いや我らは、これで終わりだ。だが、安心するがいい。
 我らは精神だけの肉体となり、亜空間に一時退避する作戦をとる最終手段をとることにした。』
 「な…ダーク・ファルスは、ソロル・セカンドとシリーズが退治したのでは…!?
 そ…それにこの激震と爆発は、封印の影響ですか!?」
 『ハハハッ…貴様は、あいかわらず妄想中は人の話を聞かない性格だったな。
 そのくせに、人に取り入る事は上手く戦略も上手かったが…まあいい。
 そこのモニターを見てみろ。』
 「え?」
そこに映されていたのは…


凄惨極まるフラーテル殺害現場と、フラーテル殺害に伴う精神の崩壊…狂気の笑みを浮かべる
ソロル・セカンドとソロル・シリーズがディラブレイズの姿であった。
 「ねぇ何故変わってしまったの?あんなに愛し合っていたのに…」
暗く昏く漆黒の闇を湛えたかの様に濁った瞳で少女は笑う。
その手に握られしは月光を受け銀色に光輝くナイフ…否、『神の宝剣』がソロルの心情を
反映させゆらゆらと形を保てずにいた…。
 「楽園へ帰りましょ?お兄様…」
モニター上では、全身から血を流し立ったまま既に死んでいると思われてたオリジナル・フラーテル
だが、よく見ればかすかに息をし視線は、精神が壊れていく妹…ソロルも見つめていた。
 「ソロル…」
 ダークファルスへと変貌と遂げようとしている兄に向かって突き立てる一撃…
無音のフォトンの爆発が、フラーテルの腹部を破壊し、よろめきながら仰向けに倒れる。
 『Ark…クククッ…ハハハハハッ!ハァーハハハハ!
 壊れた!壊れた!フラーテルも!ソロルも!
 我が求めていたのは、強き肉体!闇に落ちやすい弱き精神を持つ者!そうだ…来い!
 我が復活の贄となれ…闇の凶巫女ソロル。貴様こそが我が肉体にふさわしい!』

 その声はフラーテルの声ではなかった。
フラーテル殺害と共に、人形の様になってしまったソロル・セカンドとシリーズ。
声に導かれる様にフラフラと歩き始め、フラーテルを抱きしめる様に倒れこむ。
 「ねえお兄様?楽園を作るって…世界を平和にするって…約束は…どうなったの…
 あの頃の様な…笑って暮らせる…楽園の様な世界を作るっていったじゃない…
 なんで…なんで…こんな事に…」
 泣きながらうわ言の様に、心臓の鼓動を弱めていくフラーテルの胸元に血塗れた頬を
くっつけすすり泣いていた。
 『ソロル…泣かないで。楽園は、もうすぐ出来上がるよ。
 僕はいったじゃないか…。SEED抗体を持つ新たな新人類を作るって。
 最後の仕上げが必要なんだ…。SEED抗体の最後の仕上げ…最上級SEEDダーク・ファルス
 そのモノをソロル・セカンド…君の体内に取り込む事で全ては完成するんだ…』

 あくまで優しく、フラーテルの声音でもってソロルの髪を撫でながら言う。
しかしその表情は、悪意のこもった笑みを浮かべたままであったが…
 だがソロル・セカンドは気づかない。
いや、気づく事は決してなかったのだ。
兄を自らの手で刺してしまったこと…悔いと悲しみとで精神が壊れてしまったから…
彼女は最後の肉親であり兄を失えば、ただの被検体…太陽王カムハーンの玩具でしかないのだから。
 「お兄様…」
 『さあ…クチヅケを…愛してるよソロル・セカンド。』
 「はい…」
 『さあ…怯える必要はない。我は死なぬ、お前の体内で生きるのだからな!』
 モニターごしに、元帥のどなり声が、ソロルの耳から遠のいていく。
悲しみに心を沈めてしまった脆くも儚い心には、自らを道具としてしか見なかった者達の声は届かない。
この時、ソロルの心が強ければ遠き昔に気づいていた。
兄の異変に…決して、兄は妹を被検体の名である『ソロル・セカンド』とは呼ばないことを…
優しく全てを受け入れて、愛情をもって『ソロル』と呼んでくれることを…
悪意に塗れた運命の鎖壊れた優しき少女の魂を縛り、クチヅケと共に闇に堕ちていく…


 ソロルの体内にダークファルスが流れこんでいく。
元帥の非情な命令が飛び、ディラブレイズがソロルシリーズを踏み潰していき、ソロル・セカンドに
その巨大な足で潰したかと思われた瞬間…ソロル・セカンドが形態変化を起こし
禍々しいダーク・ファルスが姿を表す。
見る者に恐怖を与える容姿に、圧倒的な戦闘力でディラブレイズを粉砕し歓喜の声をあげた時、
封印が発動しまるで、夢を見ていたかのように人々の意識が「現実」に戻されていた。


PPTシャトル内部…

 その「夢」は、わずか数瞬の出来事であったが…
いま「現実」を戦うガーディアンズにとっては、脅威を理解するには十分すぎた。
 「ザザッ…第一部隊は、PPTシャトルを取り囲む触手…ザザッ…一点集中砲火!
  残り全部隊は、超巨大…ザザッ…の軌道を…ザザッ…めの攻…ザザッ…続行!」
 ギシギシッと機体全体軋み内部機構の異常を伝えるアラームの中、無線の音声が途切れ途切れに聞こえてくる。
そんな中、エリスは周囲の音が聞こえない程に集中していた。
皆の全ての想いを載せたフォトンを体内に極限にまで圧縮していく。
エリスを取り囲むフォトンが熱を帯び白色の炎となって手の中に浮かび上がる。
 (まだだ…まだ…もっと…もっと…)
 ドクン…突如襲いかかる全身の皮膚の上を虫が這いずり回るような嫌悪感…
その虫達に全身を舐め回されるような吐き気を催す不快感…
そして虫達が一斉に牙を向き皮膚を突き立てるかのような激痛!
 「ぐっ!?」
 「エリス!?」
 「エリ大丈夫!?」
 全身からブシュッ…と噴水のように鮮血を撒き散らし激痛に膝をつきそうになるのを耐えるエリス。
奥歯を噛み締め、叫び出したい悲鳴を飲み込む。
 (クックック…我慢する必要などない…泣き叫び倒れ伏せば楽になれるぞ?
  そう…ガーディアン・コロニーと共に命が消えゆくだけのこと…何も我慢する必要などないのだ…)

 (私は諦めない!私の思いを…皆の心からの願い…希望がある限り…私は…諦めない!)
そう、エリスの体内に流れ込んでくる悪意あるフォトンの流れ…ダーク・ファルスの意思であった。
 (フッ…ならば…)
 虫が肉を食い破りながら体内に侵入してくるかの様な絶え間無い激痛の連続!
異物を無理やり体内に入れられる様な違和感と激痛…しかし恐ろしいのはここからであったのである。
痛みはやがて快感へと変わっていったのである。
 そう、人は痛みには耐える事はできるが…快感に耐える事はできないのである。
快楽に身を委ねるをよしとせず、我慢するのは激しい精神的な苦痛を伴う。
 (これならどうだ…?お前の望むありとあらゆる快楽と快感を与えてやる…
  さあその身全てを我に捧げよ…我の新たなる凶巫女エリス=シンフォニア…

 (ふっ…)
 (フッ…さあ、お前の醜い欲望を暴き出してやろう…我が全て叶えてやる…
  フフフッ…何も怯えて震えることなど何もないのだ…さあ…心を開くのだ…)

 (ふざけるなっ!ダーク・ファルス貴様は…そうやってソロルちゃんとフラーテルの心を弄んだんだろう!)
 (我は、その者の望む欲望を叶えるために力を貸してやっただけ…
  そのためには憑代となる者の身体を借りねばならない…
  得るモノの大きさに比例して我の力を受け入れる魂の器が必要なのだ。
  ギブアンドテイクというやつだ…何も悪いことなんてしちゃいないさ)

 (貴様は、そうやって弱い心につけ入りその身を嬲りものにしようとするだけだろう?)
 (おお…これはなんてひどい事をいうのだ。我はただ望むモノを与え救いの手を差し伸べただけというのに
  なんて心を傷つけるような事をいうのだろう?)

 (黙れ!お前は、ガーディアンズ・コロニーに損害を出すことなく、ソロルちゃんにもフラーテルにも
  二度とちょっかいを出さずにこのグラール太陽系からも去れ!)
 (それがエリス・シンフォニア…お前の願いか?)
 エリスの内部で蠢く邪悪なるフォトンが意思をもったようにニタリと嗤ったかと思うと…
体内の中で激しく侵食していくのであった。
 (契約は成った!ハァーハハハハ!さあ…願いを叶えてやろう!
  クックックク…かつてのソロルと同じだな…!精神を病みながらも我と契約し世界を救おうとした…
  かわりにフラーテルが精神を病み今に至る…ククッ…楽しいなぁ。
  どうしても苦しくてしかたなければ、我の名を呼べ!再び我はきてやろう!
  フラーテルの望む楽園ような世界を作ってやろうこともできるのだぞ?
  そう…次はこの世界に根付く命全てを糧にして叶えてやろう!
  絶望の果てに、救いを望むならな…それでは、またいずれ会おう…ククク…ハハハッ)

 体内で哄笑をあげるダーク・ファルスに、エリスの怒りがついに頂点を迎える。
コイツはただ楽しんでいるー。
ヒトの命を、命とも思わず壊れやすいおもちゃの様に見ているー。
それでいながら、ヒトの心を弄び、壊れていく様を嘲笑っているのだー。
だからこそ、簡単にソロルちゃんやフラーテルの絶望し心を閉ざした者にぴったりと寄り添い
優しい言葉をかけ、一見希望の光に見える…深淵の闇の底へと誘っていくのだー。
 だからこそ許せなかった。
ヒトの心を傷つけて…世界さえも壊して、愉悦に浸るダーク・ファルスの存在が許せなかったのである!
 「グダグダうるせぇ!二度と姿を現すな!消え失せろ!
 桜華皇神流・究極奥義!『神界(しんかい)』!」
 激しい閃光を伴った球形のフォトンが触手を一瞬にして蒸発させ、超巨大SEEDの全体にヒビが入り始め
瓦解させた後爆発…巨大な破片の多くはフォトンの力で消滅させられたが…
細かな破片が各惑星へと隕石となって降り注がれていくのが見えた。


 「…終わった?…ううん違う…本当の戦いが始まった?」
 マリアが、そう呟き降り注ぐ隕石を見つめる。
そう、全員がSEEDとの戦いが、今まさに始まろうと始めるのを感じていた…
 「エリ〜身体の方は…え!?」
 フラッ…と意識を失い倒れかかるエリスを抱きしめながら、マリアの表情が真っ青に固まる。
視線の先にあるのは…全ての力を使い果たし青白い顔のエリスとは対象的に赤く黒くドクンドクン…と
脈動を続ける左腕に浮かび上がるひどく禍々しい印象を与える星霊紋の存在であった。
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