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Bland New Tea☆Time♪

Bland New Tea☆Time♪

このページは、フィーが書いたPSU小説サブストーリーとなります。
(HP小説の無断転載を禁じます。)
PSU(Phantasy Star Universeの略称)は、SEGAの登録商標です。
作品の著作権は、作者にあります。
なお小説の内容は、ゲームの攻略等を示す物ではありません。
小説はオリジナル要素を、多分に含みます。ご了承の上お読みください。
ご理解頂けない場合は、ブラウザバックでお戻りください。
なお小説内に登場する企業・組織・団体は架空のもので、実在する企業・組織・団体とは無関係です。

PSU小説サブストーリーACT.02(作者:フィー)pso-novel

「SEEDと呼ばれしモノ」 
先の式典から24時間後。

 突如現れた謎の生命体の襲来により異例ともいえる厳戒態勢が敷かれ、
住民の不安はコロニーのみならずパルムやニューデイズにも広がりを見せていた。
 ガーディアンズや同盟軍の活躍により一旦は平穏を取り戻したが
事の大きさに緘口令を敷く事が出来ず、政府はこの事態に有効な対策を取れぬまま
同盟軍並びにガーディアンズの上層部に謎の生命体『SEED』の討伐を依頼する。
 幻視の巫女から伝えられた予兆。
それは新たな『SEED』の襲来を暗示している。
今まさに、グラール太陽系を巻き込む戦いが始まろうとしていた。


――ガーディアンズ本部、粛清課。

 乱雑に書類の束が散らかっているデスク。
整頓されているとはお世辞にも言い難いその一角で、フィーは頭を悩ませていた。
 「うむむ……手強いわね……」
彼女の前には緑や青等、カラフルな色のぷにぷにした物体が映る液晶がある。
手元のコントローラーを動かし、上から降ってくる物体を左端に回転させて積み上げる。
もう天井に届くかと思われた時、
黄色の物体が引き金となり次々と連鎖を引き起こし全ての物体を消し去っていく。
 「っしゃー!!謎ぷにのLV58クリアーっ!!」
今フィーがプレイしているのは最近発売された人気ゲームの最新作『ぷにぷにフォーエバー』だ。
カラフルなぷにを4個くっつけると消え、それを連鎖させる事で相手におじゃまぷにを発生させる等の
対戦を熱くする要素もある、老若男女問わず楽しめるパズルゲームの決定版である。
一人でも遊べるように工夫が施されており、特定の位置にぷにを置くと連鎖が発動する
「謎ぷにモード」やひたすらぷにを消してスコアを競う「とことんぷにぷに」がある。
 「ふっふっふ、いよいよLV59ね。ここをクリアすれば遂にゆっちゃんに勝てるわ……!」
 気合充分に取り掛かろうとしたその時、液晶の画面がブラックアウトする。
 「アッー!」
 「仕事場にゲームを持ち込まないようにと何度言ったら解るんです」
アルベルトが呆れた顔で毎度の説教をする。
 「いいじゃないの、ちょっとくらい〜」
 「駄目です」
取り付く島も無いアルベルトに溜息を漏らしつつ問い掛ける。
 「で、なんの用よ?」
 「マスター・ゲオルギウスが司令室でお待ちですよ」
 「……やっとお呼びのようね」
ガチャ、と椅子の背凭れを鳴らして立ち上がる。
 本来ならすぐにでも呼び出されると思っていたが、
これ程時間が過ぎてから声が掛かるという事は上の方でまた何かごたごたがあったらしい。
自分が泥沼のような権力争いの尖兵にならないよう祈るだけだ。
気の乗らない様子でフィーは司令室へと続く通路を歩いていく。
 ここ粛清課は一般のガーディアンズが使っているフロアとは別の階にあり、
その存在を知る者も極僅かしかいない。
その為に粛清課内部には特殊な認証システムが至る所にあり、司令室に向かうのにも
休憩室に入るのにもガーディアンズ・タグを提示しなくてはならない。
 また、ガーディアンズの頭脳ともいえるルウですらこの場所を知らされていない。
様々な秘密を多く抱える粛清課は存在そのものがトップシークレットでもあるのだ。
幾つもの厳重な隔壁を越え、ようやく司令室に辿り着く。


――ガーディアンズ本部、粛清課・司令室。

 司令室と言っても完全に独立した部屋ではなく、
研究所に併設された小さな個室のような作りになっている。
 そこまで広くない部屋には調度品を思わせるティーセットが置かれた机、
控えめながらセンスが光る椅子、そして初老を過ぎた辺りのヒューマンが待っていた。
 白髪交じりの頭髪に精悍な顔付き。
猛禽類を連想させる鋭い眼光からは、彼が幾多の戦場を駆け抜けてきた事が感じ取れる。
 「フィー・イェルハルト、ただいま到着しました」
形ばかりの敬礼をするフィーに彼は苦笑する。
 「ほう、いつから礼儀を身に付けたのかね?」
 「うるさいわよ死に損ないのジジイが。アンタが見つけて来たヒヨッコの所為で
  こっちは毎日煩い小言を聞かせられるんだから」
これは失敬、と彼は両手を軽く上げおどけて見せる。
 ゲオルギウス・シュナイゼル。
 粛清課のトップにして各政府に強大なパイプを持つ政治家。
自身も数多くの任務を遂行してきたベテランのガーディアンズである。
 紳士的な身のこなしが好感を与えるが、内面は冷静沈着でありながら激情家。
恐ろしく頭の切れる人物で常に最善かつ効果的な判断を下す事が出来るリーダーの鏡だ。
ただ冗談や皮肉を好む為にどこか飄々とした雰囲気を感じさせる。
 「本題だが、これを読みたまえ」
そういって彼は幾つかの書類をフィーに手渡す。
 「……へぇ、連中の正体がもう判ったのね?『SEED』とは洒落た名前を付けるじゃない」
 「先の戦闘の際、隕石型のモノから花のような個体が出現した。その様子を現した、
  という側面もあるが……どうやら奴等は因子によって増殖するらしいのだよ」
 「つまり地表に接触した場合驚異的なスピードで数を増やし、且つ感染したものを新たな触媒
  にするって事かしら?」
 「まだ検証データは出ていないが十中八九間違いないだろう」
 書類の右上にはその花らしき個体が写真に写っている。
禍々しい色の花だ。触手のような茎を伸ばして地中から攻撃している様が見て取れる。
 「で、こいつを葬った歴戦のガーディアンズはもう尋問したのかしら?」
そう聞くとゲオルギウスはニヤリと笑みを浮かべる。
 「ガーディアンズでは無いのだよ」
 「どういう事よ?」
 「一般人なのだよ。……そのバケモノを葬った猛者というのは」
フィーは書類を慌ただしく捲った。
 すると、一枚の写真が印刷されていた。
 「ウェーバー……成程、あのタヌキの子倅なら出来てもおかしくは無いわね。
  しかもダルガン総統の庇護下にあるとなれば迂闊に動く訳にもいかない……そういう事かしら」
 「そこで、だ。君に何をしてほしいか解るかね、フィー・イェルハルト?」
 「何よ、SEEDのサンプルでも持って来いって言うつもり?」
 「ハッハッハ、それもいい。だが君にはもっと暇が潰せる任務を与えようと思ってね」
ゲオルギウスが手元のボタンを押すとモニターが現れ、現地の様子を映し出した。
 「これは……ニューデイズのミズラギ保護区……?」
 そこに映し出されたのはフィーが良く知る場所では無かった。
木々は枯れ果て、生き生きとしていた森は所々に死の息吹を発している。
 何より目を疑ったのは、
 「雪……!?」
 真っ白な結晶が降り注ぎ、大地は凍えたようにその身を潜めている。
そして冷気の中心には巨大な蕾が、今まさに花開こうとしていた。
 「SEEDですって!?」
次の瞬間、映像は途切れた。
 「これは先程調査隊が送ってきたものだ。恐らくSEEDは生態系だけでなく環境そのものにも
  多大な影響を与えると予想される。そして何より、あのバケモノはコロニーのみならず
  グラールの至る所に現れているというのが当面危惧すべき事柄だ」
 「ふぅん、確かに面白そうね」
答えたフィーの声は微かに震えていた。
 驚きも然る事ながら、心の奥底から込み上げる熱い衝動がフィーの体を震わせていた。
しばらく錆び付いていた心の一部が、来るべきSEEDとの戦いに打ち震えているのだ。
 早くも闘志を漲らせるフィーに彼は苦笑を漏らす。
 「まぁ落ち着きたまえ。現地ではSEEDの影響で凶暴化した原住生物からの襲撃が予想される。
  ……これを持って行くといい」
そういってゲオルギウスはグリップのような物を投げて渡す。
 「これは?」
 「先日テノラ・ワークスがトライアルした製品の試作型だ。
  安定性は悪いが出力は今までの武器と比べ物にならない程強力だぞ。
  扱うのには少々錬度が必要だが君なら使いこなせるだろう」
 スイッチを押すとフォトンの光が一筋となって伸びる。
フォトンが燃え上がるように赤い。材料にバンフォトンを使っているのだろう。
 「光波鞭とは中々いいセンスしてるじゃない」
 「Sな君にピッタリだと思うが?」
試しに振るってみるとヒュン、と風を切る音と共に伸びたフォトンが机の上のティーセットを打ち抜く。
粉々に砕け散った残骸を見てゲオルギウスは膝を着く。
 「私のティーセットが……っ!!」
 「へぇ、いいわねコレ。気に入ったわ」
 「給料から引いて置くぞ」
 「秘蔵のボトルも打ち砕いて欲しい?」
 「くっ……魔女め……」
 さめざめと男泣きしながら破片を拾い集めるゲオルギウス。
余程ご執心の逸品だったのだろう。
と、急に真面目な顔付きになった彼はフィーに言う。
 「未確認だがミズラギ保護区にPPTシャトルが墜ちたとの報告がある」
 「シャトルが?さっきの騒ぎの時に脱出した住民かしら。
でもそれにしたってとっくに捜索がされている筈じゃない?」
 「地表近くではSEEDの影響もありシティ付近の防衛に同盟軍やガーディアンズが
  出払っている状況なのだよ」
 「おっけー、任務は『SEEDが与える影響の調査及びPPTシャトルの搭乗員の生死確認と保護』
  ってところかしら」
 「うむ、死なない程度に頑張ってくれたまえ。あぁ、それともう一つ」
部屋を出て行こうとしたフィーに神妙な顔を向ける。
 「友人の娘が行方不明でね、名をエリス=シンフォニアという。
もしかしたらそのシャトルに乗っていたかもしれん」
 「どういった要人の娘なのかしら?」
 「いや、普通の少女だ。彼女の父親とは古くからの友人でね、是非安否を確かめてやりたいのだよ」
 ゲオルギウスの表情に本来の人間らしさを垣間見た気がした。
 狐と狸の化かし合いは得意だが、純粋な想いをぶつけられると弱い。
フィーはやれやれと溜息を吐きながらも、任務の最優先順位を入れ替えた。


――ガーディアンズ本部、粛清課。

 粛清課のオフィスに戻ると、装備の手入れをしているアルベルトがいた。
彼はフィーを見ると雑務を止めて立ち上がる。
 「さっそく発つのですか、フィー?」
 「ええ、要人を迎えにね」
冗談めかして答えるフィーに彼は予想していなかった言葉を放つ。
 「では行きましょうか」
 「……は?」
 「既に移動用のシャトルは手配しておきました」
 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。それって」
そこまで言い掛けた時、フィーの机にメールが届く。
 『言い忘れたが、今後は君の正式なパートナーとしてアルベルトを付ける事に決定した。
  この事に意見がある場合は件のティーセットの清算を済ませてからにされたし。
  ――粛清課主任・ゲオルギウス』
 「はぁっ!?」
 「という訳です。出来る限りのサポートはするのでよろしくお願いします」
 すたすたと先にポートへ向かうアルベルト。
ぎり、と奥歯を噛み締めながらフィーは忌々しげにメールを削除した。
 「あのクソジジィ……いつか死なす!」
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